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前編
俺は居酒屋の扉を開けた。高校を出てから初めての同窓会だった。懐かしい面々の顔があった。
親友の磯辺が手を上げて俺を見た。
「おい、こっちだ。大里!」
俺は磯辺方に向かって歩いていく。
磯辺の隣に淀川さんがいた。俺は淀川さんに挨拶しながら磯辺の隣に座った。磯辺が笑いながら言う。
「何を飲む? ビールでいい?」
頷く俺に淀川さんが聞いた。
「大里君は、大学は東京だっけ?」
「そう。でも東京の端だよ。この辺と変わらない」
「へぇ。そうなんだァ。でもいいなぁ。うちなんて地元の大学だし。たぶん就職もこっち」
磯辺が真顔で言う。
「いいじゃんかぁ。俺もずっと地元民だよ。仲良く遊ぼう」
淀川さんはニコニコ笑って言う。
「ごめん。私は大里くんと東京で遊びたい」
「大里を狙っているなら諦めなよ」
「何で?」
「大里は日菜子ちゃんと高校の時に別れてから、まだ日菜子ちゃんを諦められないんだから。爽やかな見かけなのに、ウジウジしているんだよ」
淀川さんは目を丸くして聞いてきた。
「え? 嘘ぉ。大里くんが日菜子ちゃんと付き合っていたの? 確かに日菜子ちゃんは明るくて元気で可愛かったけど……」
「ああ、お似合いだろ」
「でも、別れたんだぁ」
俺は淀川さんの質問にうなづく。
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