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俺は隣を歩く日菜子を見てドキドキが止まらない。
そして、思う。
――俺は日菜子が好きだ。
日菜子を車に乗せて、墓場を後にした。
俺は、狭い車の中で2人きりなのがなんだか照れくさくて、滅多に聞かないカーラジオをつけた。
ラジオから昔の曲が流れ出した。
日菜子が言う。
「これ英語だよね。メロディが古いね。誰の曲かな?」
「さぁ、何だっけ。ビートルズだったかな」
「優しいメロディだね」
日菜子はその曲が気に入った風だった。
古い曲を聞きながら、俺達は無言になる。
誰の曲かも朧げな歌をバックミュージックに、俺は車を走らせる。県道を真っ直ぐ走らせ、それから海沿いを走る国道に出た。国道を15分も走ると、パンケーキ屋に着いた。
店内に入ると、店員が聞いてくる。
「何名様ですか?」
俺はピースサインで2名を表した。
店員は俺の周りを目視して、ちょっと視線を泳がせてから言った。
「窓際のお席にどうぞ。お水は後からお持ちします。ご注文が決まらえたらベルを押してください」
俺と日菜子は窓際の席に座る。日菜子がわざわざ俺の隣に座った。
「なんでわざわざ隣に座るの?」
日菜子は寄り添って言う。
「ダメなの?」
日菜子が可愛く笑う。
「くっつき過ぎだよ」
俺は体を逸らして日菜子から離れようとした。しかし日菜子が俺を追いかける。
「良いじゃん」
日菜子が俺を見つめる。
――こんな事されたら、俺は期待してしまう。
俺は日菜子への抵抗をあきらめてメニューを広げた。
「注文しよう。何にする?」
「私は食べられないから」
「お腹いっぱいなの?」
「うん、そう」
「じゃ、なんでパンケーキ屋に来たの?」
「約束したから。大里くんと一緒に来たかったの」
俺は日菜子の言葉に、つい心が浮かれてしまう。
「でも、飲み物くらいは飲めよ」
「私、お金ないし……」
「え? 飲み物代もないの?」
「うん、ゴメン……」
「良いよ。分かった。奢るよ」
俺はベルを押す。
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