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俺は携帯を取り出し画面を見る。俺は携帯の画面を見て凍る。俺は携帯を手に握ったまま日菜子を見る。日菜子が俺をの携帯画面を覗いていた。
「日菜子……、このメッセージの内容って……。本当なの?」
「私の嘘、バレちゃったね」
携帯画面にはこう書いてあった。
――日菜子ちゃんは、転校して1年もしないで亡くなってしまった。病名はご家族が伏せているらしく分からなかった。
俺は日菜子に尋ねる。
「生きてるなんて、嘘なの? 何で嘘ついたの?」
日菜子が小さな声で言う。
「お化けだって言ったら、怖がって逃げると思って」
「逃げないよ」
「そうだね。うふふ」
「こんなに好きなんだ。逃げるわけ無いだろう」
「私、死んじゃったんだ。今の私は霊なの。だから大里くんと付き合えないんだ」
日菜子の言葉に俺は切なくなる。日菜子が俺の胸に顔を埋めた。俺は日菜子の頭を撫でる。
「日菜子なら、霊でも構わないよ。死んで直ぐに、どうして俺のところに来てくれなかったの?」
「お墓から離れられなかったの。でも大里くんから会いに来てくれた。嬉しかった」
俺は日菜子をキツく抱きしめた。
日菜子を抱きしめる俺に、日菜子の腕を見せてきた。日菜子の腕の線がぼやけて見えた。
「お迎えがきたみたい。行かなきゃ」
「何処に行くの? このままずっと俺たち一緒にいようよ」
「大里くんとの約束を果たして、この世に未練はなくなったから。やっと行けるのよ」
「日菜子の未練に、もう俺はなれないの?」
日菜子の姿はどんどん薄れていく。
「大里くんは未来がある人だから。霊の私と、これ以上交わちゃダメだよ」
日菜子の体は消えかかっていた。手足は既に消えてしまっていた。俺は、日菜子の半分以上消えてしまった姿を見て、日菜子をこの世にとどめておくことは出来ないのだと思う。
切なげに日菜子が言う。
「生きいてるって、嘘ついてごめんね」
もうすぐ消えてしまう日菜子を、俺は慰めたくて微笑む。
「安心して。今日はエイプリルフールなんだ。嘘が許されるんだよ」
日菜子の顔が、陽の光のように華やいだ。
「大里くんが大好き」
「俺も日菜子が大好きだ」
大好きな日菜子の輝く笑顔が薄れていく。
言っても無駄だと思いながら、俺は言ってしまう。
「行かないでくれ。日菜子の笑顔を、ずっと見ていたいんだ」
俺は懇願したが、日菜子は跡形もなく消え去ってしまった。
誰もいない海辺に、俺だけが取り残された。
「キスしなければ良かったのかな……」
後悔する俺は、不意にカーラジオから流れた曲の歌手名を思い出した。
「あっ、モンキーズかぁ」
携帯でモンキーズを検索して、動画を見る。
俺しかいない海辺に、日菜子の言うところの優しい詩が流れ出す。
優しい詩が、波の音に混ざっていく。
――fin――
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