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俺のことなんて、お見通しだった。
「私はね、あなたと添い遂げるつもりだったの」
妻は、静かにそういって、俺の目を、まっすぐに見つめる。
逃げられなかった。
妻から目線をそらしたら、妻に対して誠意がないように思えた。
達郎を好きになったことで、もう誠意なんて吹き飛んだはずだから。
今、目をそらすことだけは出来なかった。
「でも、あなたに他に好きな人が出来たなら……。身を引くしかないと、思ってるわ」
「相手が、息子の義父でも……?」
「どんな相手だって関係ないわ。人を好きになるのに理由はないし……」
妻は、ふふっと微笑んだ。
おだやかに、そして、すこし寂しそうに。
「あなたにとって運命のひとが私でなかったのが、悲しいけれどね」
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