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新幹線の窓から、山が見える。
空が見える。
沢山の家々が見える。
それらのすべてに人生があるのだ。
もしかしたら、俺たちのような「間違った人生」を歩んでいる人もいるかもしれない。
沢山の人を傷つけた人たちもいるのかもしれない。
それでも……いま、達郎と共にいられることの幸福は、捨てがたいのだ。
新幹線からおりて、桜並木を歩くと、
「わあ……」
と、達郎が声を上げた。
薄紅の桜が、一面に咲いている。
川面には桜の花びらが散り、人々は、嬉しそうにさんざめいている。
きっと、そのなかには、俺たちの妻たちと同様に辛い思いをしてきた人もいるだろう。
それでも、今この桜の下では、みな、同じ顔で、頬をゆるませているのだ。
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