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   この世には、男女の他に"第2の性"が存在する。  社会的に優遇され、エリート気質の"α"。ごく普通の一般人の"β"。そして、発情期(ヒート)が有り男女共に妊娠が出来る"Ω"の性が有るのだが、俺はαと診断された。  中学入学前に診断を受けるのだが、第2の性が判明すると周囲の様子が変わったのに気付いた。特に発情期(ヒート)が有るΩは周囲から距離を置かれる場合が多く、中には虐めを受ける者も居た。Ωから発せられるフェロモンは特にαを誘引し、理性を失ったαはΩを襲う場合が少なくない。巷でも似たような事件のニュースが報道される事が有る。  αはΩのフェロモンに誘引されやすいが、俺の体質はΩのフェロモンに全く反応する事が無い。なので、親しい人間以外は俺がαだと知らないのだが、もう隠し通せそうも無い。  何故なら_ 「Ωだからって舐めているから痛い目を見るんですよ」  地面に転がる男達の中央に立つのは、ネックガードを付けた顔立ちの良い男。俺はその光景に苦笑いを浮かべながら頬を掻いていた。  この男_、茜永清(えいせい)は俺の護衛対象で有り婚約者のΩである。  俺の家は極道の端くれで今の代で解体する事になっているのだが、茜組の当主と親父が昔話していた許嫁の件を進める事になったのだ。  茜さんは俺と同じく特異な体質で、未だに発情期(ヒート)を迎えていないので番どころの話では無いのだが、特に気になっている相手が居ないのならば特異体質同士結婚させようとなった。  未だ番でも無いのだが、Ωの茜さんと婚約者だと周囲には知られてしまい言わずとも俺がαだと知られてしまったのだ。 「茜さん、手を出さないと約束したでしょ」 「そうでしたか?…喧嘩を売って来たのだから買わないといけませんよ」 「…全く」  殴った拳を取り、ハンカチで血を拭う俺をじっと見詰める茜さんは優しい笑みを浮かべてはいるものの、俺から見れば目は笑っておらず壁を感じるのだ。親が決めた許嫁で知り合ったばかりの相手。然も、茜さんはαを嫌っている様子で番になる気は無い。  この関係も一年間の期限付きで、お互いに気が合わず婚約したくない場合は直ぐ許嫁の話を破棄して良いと言われたが、幾ら親同士が仲が良いと言えど断るのは少し怖い。立場上はこちらの家の方が地位が低いのだから。 「君はαなのに、Ωの世話をして何も感じないのですか?」 「特には」 「普通ならプライドが傷付くと思いますけどね」 「プライドって…。俺はαと診断されて良かった何て思った事無いし、Ωだろうと同じ人間なんで」
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