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次の日、いつも朝早くに起きている茜さんは昼下がりに起きて来た。熱は下がり、体調も良くなったらしくシャワーを浴び終えると遅めの昼食を食べ始めたのだが、少し違和感を感じた。
全く視線が合わない上に、今迄壁を感じていただけだったのだが、距離感が遠くなった気がしてならない。
「_これからの事ですが」
茜さんにどうしたのか聞こうとした時、先に茜さんが口を開いた。俺はどんな話をされるのかと内心緊張していた。
「君には護衛を辞めて貰おうかと思います」
「…え」
「勿論、組長には相談しますが…」
「待って下さい!もしも護衛を辞めるとなれば、婚約の件も破棄と云う事ですか…?」
もしも、護衛を辞める事になれば俺は此処に居る理由は婚約者と云う理由だけになる。然し、茜さんの様子を見るに運命の番だろうと関係無く番える気は無さそうだ。
「そう言う事になりますが、私達が番えなければお互いに困る事になるでしょうね」
運命の番と出会った以上、誰かと番えても結局遺伝子的に惹かれ合うので離れる事は出来ないだろう。
それを知っていて、茜さんは俺を突き放すのは余程αが嫌いで番いたくない様だ。
「…正直言うと、君の様な子が運命の番で良かったと思います。けれど私は…、いえ何でもありません」
何か言おうとしたが、少し悲しそうに誤魔化しては食事を再開した姿を見て、これ以上何か言う事は出来なかった。
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