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 あの見合いから数日。  俺は変わらず離れにて茜さんと暮らしていたが、会話を交わす事が少なくなり護衛として傍に居る事が無くなった。そんな中親父さんに1人呼び出され、俺はもう護衛としての任を解かれるのだと思った。 「永清から話は聞いた。護衛の任は解くつもりは無い。それと婚約の件もだ」  予想外の事で「え」と声が漏れる。  護衛の件は解かれるものだと思っていた。まぁ、当然護衛で無くなれば婚約の件も共に無くなると。然し、親父さんは茜さんの申し立てされたが聞く気は無いらしい。 「⋯良いんですか、茜さんの気持ちを無視して」 「少し強引にいかないと、永清は何も変わらないだろう。君には迷惑を掛けるがもう少し永清の傍に居て欲しい」 「そ、そんな頭を上げて下さい⋯!」  深々と頭を下げる親父さんに驚き、手をブンブンと振りながら頭を上げる様に訴えた。然し、親父さんは頭を下げたまま話を続けた。 「⋯永清が嗚呼なってしまったのは俺の責任でも有る。なるべくならば願いを叶えてやりたいが、それでは変わる事は出来ないだろう。」  この親子の過去に何か有ったのだろうか。茜さんがαを毛嫌う理由を知っているのは間違いない無いが、これ以上他人の俺が踏み込んで良いものか。 「あの、茜さんは何故αを嫌うんですか?いや、Ωがαを嫌うのは良く有る事ですけど…」 「…これから共に過ごすならば知っておいた方が良いだろうな」  話し辛い事なのか、渋い顔をしながらも茜さんが何故αを嫌うのか話し始めた。 「…永清は俺の実子じゃない。恐らく、君も噂を聞いた事が有ると思うがな」  親父さんの言う通り、何度かそんな噂を聞いた事が有る。然し、何処と無く似ている為にそんな噂を信じていなかったが事実だった様だ。 「永清は俺の妹の子供だ。つまり甥っ子なんだが、Ωの妹はαの番と結婚し永清を産んだんだ。…物心付いた頃から、番は女遊びが激しくなり、妹には手を上げる様になったんだ」 「それって…、茜さんにも手を上げてたんですか…?」 「…妹が守っていた様だが、何度か手を上げられていた。妹は逃げ出そうにも番えている以上、逃げれないと考えた。それに番とは運命だったんだ」 「運命…」 「だが、妹は永清が番からの性暴力を受けていたのに気付き逃げる事を決心し、俺の元に逃げ込んで来たんだ」  ”性暴力”_、そんな言葉に俺は一気に身体から熱が消えた。  血の繋がった実子に暴力を振った挙句、性的な行為をするなんて考えただけで悍ましい。そんな事が有ったのならαを嫌い、番えるのを拒否するのは無理も無い。
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