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 「_さ、これ着けて下さい。似たようなの買って来たので」と、あからさまに怒ってますと言わんばかりの態度でネックガードを渡した俺は相当嫌な奴だろう。  新しいネックガードを着けている茜さんの姿を見て、景介に選んだ物はどうしたのかと聞かれた。  事情を話すと、景介は頭を抱えては深く息を吐いた。 「まぁ、茜先輩も悪いけど、嗚呼して着けてくれてるのに何でまだ怒ってるのさ」 「だって、俺の事クソ男だと思ってんだもんよ」 「それは苛つくかもしれないけど、そんな事思ってる相手から貰ったやつを着けないでしょって言ってんの!」 「それは、そうだけどよ⋯」  あんな態度で渡したというのに、茜さんは嗚呼して着けてくれている。そりゃあ、傷付いてる物を着け続けなくないだけかもしれないが、嫌なら自分で買って着ければ良い話だ。  結局、俺はコロコロ手の上で転がされている様で面白くない。  どっちがαなんだか分からない状態である。まぁ、俺がαらしくないので別にどうでも良い話だが、他から見れば俺は情けないαなのだろう。  普通ならば必然的にαが優位になる。別に俺はαだから敬って欲しいとかは全然思っては無いが。 「結局、遙はどうしたいの?親が決めた事だけど、嫌なら断って良いって言われたんでしょ?」 「それは⋯」 「好きなら好きで茜先輩の事を守って支えないと。けど、今の遙は茜先輩に恋愛感情は無さそうだよね」 「⋯恋愛感情⋯。運命の番だからって思われたく無いんだ。好きとかまだ分からねぇけど、俺はきっとあの人しか番たくない」 「⋯それ、本人に言えば良いのに。何か僕の方が恥ずかしくなっちゃった」 「何で?」  本人が嫌と言っているなら、親父さんが認めたからと言ってこのまま傍に居るのは嫌われる原因なのではと考えていると、廊下の方が騒がしくなったのに気付いた。 「お、見っけ〜。蕪木遙君〜、ちょっと良いかなぁ?」 「は、俺?」 「そうそう〜」  2年の教室に現れたのは、3年の鹿島(かしま)灯里(とうり)さんだった。話した事も無いが、αの鹿島さんを狙う生徒が多いと有名なので俺も知っている。  手招きされ、恐る恐る鹿島さんの元へ駆け寄ると「場所移そうか」と歩き出した。
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