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 会話は無く、到着したのは保健室で扉には“保健医不在”と書かれた札が提がっていた。  何故に俺は保健室に連れられたのかと首を傾げていると、先生が居ないにも関わらず豪快に扉を開いた鹿島さんは「入って」と促した。 「悪いなぁ、突然連れて来てよ〜。オレにはどうする事も出来ねぇからさ」 「一体どういう⋯、って茜さん⋯?」  横目でベッドの方を見れば、そこには眠っている茜さんの姿が有った。傍らには荷物が綺麗に置かれている。 「永清、突然倒れたんだよ。周りは気付いて無いみたいだけど、発情(ヒート)を起こしたとは思う」 「起こしたとは思うって、何か曖昧っすね」 「それが、フェロモンの匂いは本当に僅かな上に一瞬だけなんだよ。本人は苦しそうだったんだけどよ〜」  あの見合いの日も抑制剤のお陰で収まった後、急激な発情に身体に負担が掛かり熱を出した。あれから何事も無く過ごしていたのだが、もしかしたら本格的な発情期を迎えるのかもしれない。  然し、一瞬だけなのは引っ掛かるが茜さんの事を運んでくれた鹿島さんに頭を下げた。 「いーよいーよ。オレ、永清と幼馴染だから色々知ってるから何か有れば手ぇ貸すからさ〜」 「幼馴染なんすか?」 「永清から聞いてない〜?まぁ、自分から何でも言う性格じゃねぇし聞いてないのも無理ねぇか」  何だか、幼馴染だからか俺より仲が良いのは当然だが何とも言えない気持ちになる。胸がモヤモヤとして気持ち悪い。  一丁前に嫉妬をするのか俺は。気持ち悪っ、付き合ってもねぇのに。 「多分さ〜、永清のフェロモンって君以外には余り気付かれないんじゃねぇかなぁ〜?普通だったら匂ったら反応する訳だし。近くに居たオレでさえ甘い匂いするなって感じだったしよ〜」 「⋯番えてないのにですか?」 「そうみたいだけどさぁ〜。オレはそう思ったってだけだからあんま気にしなくて良いって」  「じゃ、後宜しく〜」と、俺の頭を撫でては保健室から出て行った鹿島さんにもう一度頭を下げると、連れて帰ろうと先生に早退すると伝えた後眠る茜さんを背負って校舎を出た。
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