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「_という訳で、頼む」
「無理」
「そこを何とか頼む!」
「無理なものは無理!」
永清さんと出掛ける日程を決めた後、景介に4人で出掛けようと伝えたのだが、断固として頭を縦に振らなかった。
「お願い♡」
「ねぇ、君のそんな可愛い感じに言っても僕には効かないからね。というか、需要が無いよ」
「偶に毒吐くの何で」
恥を忍んでお願いしたのに、切り捨てられて落ち込んでいると背後から肩を抱かれた。
「な〜にしてんの?」
「か、鹿島さん!」
俺の頭に顎を乗せて体重を掛けるのは鹿島さんで、目の前に居た景介は見た事無い程の速さで離れた場所へと逃げていた。
いつの間に逃げていたのだろうか。まるで猫の様に威嚇をしている姿を見て、鹿島さんは頭上で「泣いちゃう」と呟いた。
「景介、鹿島さんに失礼だろ」
「いーのいーの。怖がられる事には慣れてるしさ〜」
俺から離れると、余り気にしていない様子で威嚇する景介に手を振る鹿島さん。ペットが全く懐かない飼い主の様だ。
「遅くなりました。⋯何ですかこの状況は」
「いや、突然現れた鹿島さんに驚いて威嚇してんすよアイツ⋯」
職員室に寄ってから教室に来た永清さんは、異様な光景を見て不思議そうに首を傾げている。
事情を話すと、景介が困っているからと鹿島さんに注意しては景介に優しく笑い掛けては手を取った。
「え、あの、」
「突然のお誘いで戸惑っていると思いますが、もしお時間が有れば一緒にお出掛けして頂けると嬉しいのですが⋯。どうしても駄目、ですか?」
(うわ、顔が良い)
少し甘えた声を出しては悩ましげに眉を下げてお願いする姿を見て、景介は胸を撃ち抜かれたのか簡単に首を縦に振った。
同じ様な事をした俺にはあんな毒を吐いた癖に態度が違い過ぎないか?
「もしも、灯里に変な事をされたら直ぐ教えて下さい。私が制裁を下すので」
「ちょ、永清が言うと洒落にならないんだけど〜」
「現実にならない様に気を付けなさいね」
永清さんのお陰で4人で出掛けられる事になったのだが、鹿島さんと別れるまで景介は俺の後ろに隠れ威嚇していたのを見て、鹿島さんの恋の手伝いの道程は長いと頭を悩ませた。
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