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一度本邸に寄りお土産を置いて行こうと考えた俺達だったのだが、本邸は騒がしく若衆達がそこら辺に転がっている。敵襲かと思った俺だったが、隣の永清さんは困った様に頭を抱えていた。いや、何か顔色が宜しく無い様なのだが_?
「おお!帰って来てたのか、永清!」
客間から現れた派手な男の手には、伸びた若衆の胸倉が握られていた。永清さんとは知り合いなのか、此方に気付くと男を話して近付いて来た。護衛として守ろうと前に出ようとしたのだが、永清さんは俺を制止させた。
「お前も遂に番を見付けたと聞いた!これで安心安心!」
「…お久し振りです、日愁兄さん」
ガハハと豪快に笑う日愁と呼ばれた男を良く見ると、親父さんに似ていると思った。そう言えば、永清さんの上には1人兄が居ると聞いたが確か名前は同じ"かしゅう"と言った筈_。
「お前が護衛の蕪木か。お前が番になったのか!それはおめでたい!」
「え、あの、いって!」
強い力で背中を叩かれたと思えば、肩を掴まれ引き摺られる様に大広間へと連れて行かれた俺は助けを求めたが、永清さん達は首を横に振っていた。
「_いやぁ、自己紹介が遅れた!俺はこの家の長男、茜日愁と言う!知っての通り跡を継ぐ気は無く、家を出て一般人として生活している!」
元気な自己紹介に暑苦しさを感じながら、俺は何も言わず話を聞いていた。隣の永清さんは慣れた様にお茶を飲んでいる。いや、兄弟なのだからこの暑苦しさには慣れているだろうが、本当に性格が真逆で戸惑いが大きい。
「永清の体質が変わったと聞いて心配で帰って来たんだが、こうしてお前と出会えるとは。永清の事、宜しく頼む!」
「は、はい!」
「よし、良い返事だ!」
今迄、発情期を迎えていなかった永清さんの体質が急に変わったら心配になるのは無理は無い。
勘当されている訳では無いので家に帰って来るのは容易だろうが、永清の口ぶりからして暫く帰って来ていなかったのだろう。それにしても、一般人として生活しているとの事だが、あの力の強さと若衆達の屍を見ると相当な実力を持っているのだと分かる。
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