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「それじゃあ、俺は親父に挨拶して帰るな」
「まさか、多忙の中来て下さったのですか?」
「そこまで忙しくないぞ!ただ、お前が心配で仕方が無くて何も考えずに来たんでな。次は恋人と一緒に帰るからな〜!」
そう言って、太陽の様に眩しい笑顔を浮かべては永清さんの頭を撫でた日愁さんは親父さんの元へと向かった。まるで嵐が過ぎ去った様な感覚だったが、少し離れた場所から「親父!」と日愁さんの声が聞こえ、随分大きな声をしていると苦笑いが溢れた。
その後、挨拶を終えた日愁さんを見送り俺達は離れへと帰宅した。その際聞いたのだが、日愁さんは帰って来る度に若衆達が成長したか確認する為に暴れ回るそうで、相手をした若衆達はボロボロの状態のままお土産のお菓子を食べていた。
「凄い良いお兄さんですね、日愁さんって」
「ええ。私を受け入れて、優しく接してくれた尊敬する兄です」
久し振りに会えて嬉しそうな様子を見ると、余程日愁さんの事を慕っているのだろう。
過去を聞くに、親父さんに引き取られた時は未だ幼かった永清は不安で仕方が無かった筈だ。そんな中、あの太陽の様な日愁さんの存在はどれだけ大きかった事か。
「…次、日愁兄さんが恋人と来た時には、私達も番になってますね」
「え、そ、そうですね!!」
「ふふ、今から緊張してたら身が持ちませんよ」
「…ごもっともで」
普通ならば、αの俺がリードしなければならないのに今からもう余裕が無いのは格好悪過ぎやしないか?
だが、番いたい相手と番えるとなると誰だって余裕は無くなると思うのだか。
「それまでは我慢して下さいね」
「え、それって⋯、キスとかは⋯?」
「⋯我慢出来るなら許可しましょう」
「それは、拷問なのでは⋯?」
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