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_ドクン
『_餓鬼なんざ要らなかったが、Ωなら俺の性処理の道具に出来るから助かったわ』
『Ωなんざ、ただの道具だろ。αに逆らうんじゃねぇよ』
男に身体を触られ、昔の事を思い出した。
忘れようにも忘れられず、父親に触れられた感触が今蘇ってくる。頭が殴られた様に痛み、身体が上手く動かない。遠くの方で遙君の声が聞こえるが、反応する事が出来ず首に手を掛けられた時、事務所に銃声が響いた。
目の前で犯されそうな永清さんを助けられずにいた時、事務所に銃声が響き渡り永清さんの上に乗っかっていた男が呻き声を上げながら床に倒れ込んだ。
次に俺を押さえ付けていた男も打たれ、解放された俺は慌てて永清さんに駆け寄った。
若衆達が駆け付けてくれた様で男達は次々に倒されていく。拘束していた縄を切って貰い、服を破られた永清さんにブレザーを掛けたのだが様子が可笑しい事に気付いた。
「…永清さん?」
身体が震え、視線が全く交わらない。発情していると云うのに身体から熱は消え冷たくなっているではないか。
「っ、ごめんなさい、ごめんなさい…っ」
「_っ」
まるで幼い子供の様にボロボロ涙を流しながら謝る姿を見て、永清さんを抱き上げると車に乗り込んだ。本邸に向かう最中も小さな声で謝る永清さんがとても弱々しく痛々しくて仕方が無く、抱き締めたまま到着を待った。
抑制剤を打ち、眠った永清さんは未だ魘されている。恐らく、過去の事を思い出してしまったのだろう。
護衛の癖に何も出来ずに永清さんを苦しめてしまったと後悔し、手を握っては目が覚めるのを待った。
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