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 見合い当日。相手は(すめらぎ)組という茜組より下の地位であるが、ここ最近力を付けてきていると噂されている。  勿論、この世界じゃあ犯罪行為何て日常茶飯事なのだが悪い噂ばかり流れているらしく、何が起こる可能性は高いと護衛の数を増やした。  然し、部屋に入れるのは茜さんと相手方の2人のみ。  守る事も直ぐに駆け付ける事も出来ないのが厄介である。当然相手方の方も同じ状況だろうが。 「それでは行ってきます」  正装をした茜さんを見送り、俺は他の護衛役と共に料亭の外で待機する事になった。  料亭は貸切で一般人は居ない。何か有っても巻き込まれる事は無いので、茜さん1人に集中出来る。と言っても、俺は他の人よりも弱いんで足手まといかもしれないが。 「⋯何事も無けりゃあ良いけど」 _ 「本日は見合いを受けて下さり有難う御座います。断られるかと思ったのですがね」  向かい側に座る男は私より数個歳上の様で、敵意は無いと優しい笑みを浮かべている。  私は男の話をただ聞きながら、出されたお茶をじっと見詰めていた。  色の変色、匂いは無い。  ただ、それだけでは何も判断出来やしないが毒は入っていないだろう。此処で私が死ねば、自分達の命が危険に晒されるだけだ。そんな危険な事する筈が無い。 「私は盃を交わしたいと考えております。お互いに和解し、良い関係になる為には番える事が良いと考えましてね」 「私が貴方と番えるとお思いですか?余程、自分に自信が有るのですね」 「はは、そんな事は有りませんよ。ただ、貴方は頷く他無いでしょう?」  男の言葉を合図に、襖が勢い良く開いては此方に銃口が向けられた。  料亭には私達以外入る事を禁じていた筈だが忍び込んでいたらしい。 「死にたくないのなら頷けと?そんな脅しで私が怯えて従うと思われているとは心外ですね」 「頷かなくとも良いのですよ。ただ、そのお茶を一気に飲み干して頂きたい。大丈夫、死にませんから」  やはり、このお茶には何か入っているのか。毒では無いとなれば、強制的に発情させる薬かと考えた私は湯呑みを手に持ち、何の躊躇いも無く飲み干した。  
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