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「_客人、ですか?」  年明けて数日、1人組長に呼び出された私は客人が本邸に来訪すると伝えられた。 「お前も会った事が有るだろうが、理戸(あやと)組の一人娘だ」  理戸(あやと)組_、関西最大の指定暴力団で、茜組とは兄弟盃を交わしている。  蕪木組とも盃を交わしていたが、兄弟盃ではなく親子盃だった筈だ。  一人娘、理戸氷知(ひじり)さんとは何度か会った事が有るけれど、少し話した位で親しい訳じゃない。 「街の案内を頼みたい。勿論遙君も共に」 「それは構いませんが、何故こちらに?」 「観光と聞いているが、親に似て何を考えているか分からん。本来なら遙君に頼むのだろうが、犬猿の仲らしくてな」 「犬猿の仲⋯、ですか?」 「詳しい事は知らんが、2人の間で何か有るんだろう。兎に角、宜しく頼むぞ」  立場上、親子盃を交わしているとなれば遙君の方が理戸さんに従わなければならない。けれど、2人は犬猿の仲と云うのは一体何が有ったのだろうか?  本人に聞くのが早いと判断し、離れへと戻った私はテレビを観ていた遙君に声を掛けた。 「組長から指示が有りました。今週末に京都から理戸氷知さんが来訪されます。街を観光されるそうなので私達で案内をする事になったのですが⋯、どうしたんですかそんな顔して⋯」  理戸さんの名前を出した途端に、まるて苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべた遙君。この様子を見るに本当に犬猿の仲の様だ。
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