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「お待たせしました。⋯どうしたんですか、遙君?」
「いや⋯、何でもない」
注文の品を持って戻って来た2人は、俺が頭を抱えては溜息を吐いていたので不思議そうに首を傾げている。
先程の会話を話す訳にもいかず飲み物を受け取ると、氷知は口を開いた。
「私達がこっちに来たのは観光も有るが忠告をしに来たんだ」
「⋯忠告、ですか?」
「その内、私とお前の命が狙われる。未だ私達の勝手な想像だがな」
氷知はそう言うと、呑気にコーヒーを飲んだがこちらはそんな話を聞いて気が気では無い。永清を狙っている人間は当然居るが、実際に狙いに来る者は居ない。茜組がそれだけ恐ろしい存在だからだが、氷知が言うと妙な説得力の様なものが有り警戒心が高まる。
「昔、そちらの組長殿が追放した男を覚えているか?」
「⋯囲夜友久さんの事ですか?勿論覚えています」
「その囲夜が私達の存在を面白く思っていない奴らと手を組んでいると情報が入った。恐らくは追放された事への復讐が理由だろうが、茜組を潰すついでにこちらも潰そうという算段だろう」
囲夜友久_、かつて親父さんの元で幹部として組を支えていた人間だ。
確か、永清を養子に迎えると云う事を反対していた1人だと聞いている。
「⋯私の存在が消えれば跡継ぎは居ない。日愁兄さんは決して継ぐ事は無いので、私を殺せば潰すのも簡単ですからね」
「茜組には組長に相応しい人間が居るとは思えない。突くなら今だろうな。理戸組で厄介なのは特に私だから妥当だろう」
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