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 運命の番は、遺伝子的な相性が良く惹かれ合う関係で、例え番えていようと、Ωのフェロモンに引き寄せられてしまうと言われている。  然し、今まで俺達の身体に変化は無かったにも関わらず今こうして俺はフェロモンに当てられ、茜さんは発情している。  あの湯呑みに何か入っていたのは間違いない。それを飲んで強制的に発情させられているのだろう。 「っ、茜さん、抑制剤持ってますか」 「⋯懐に、入ってます⋯」 「⋯失礼します」  後で殴られても良い。取り敢えず早く抑制剤を飲ませて落ち着かせなければと、懐に手を入れ抑制剤を取り出す。  それを茜さんの口に入れて飲ませるが、強くなるフェロモンの匂いに意識が朦朧としては、強い欲求が脳を占める。  早く触れたい。噛みたい。番にしたいという欲求で頭がいっぱいになる。今にも理性を失って噛み付きそうで_。  噛みたい衝動を抑える為に俺は自分の右手に噛み付いた。突然の行動に驚いた様だが、ふっと意識を失っては俺の方に倒れ込んだ茜さん。  血が付いてしまうが仕方がない。今の内に運んで本邸に連れてって貰わないとならない。  俺は急いで外で待っていた運転手に頼み本邸へと向かった。その間襲わぬ様に自分の手を噛んでいた俺を運転手は心配そうにミラー越しに見ていた。 「_君は凄いな。運命の番のフェロモンに耐えるのは容易な事じゃない」  茜さんと俺の手当を終え、親父さんはそう言った。抑制剤を飲んだお陰かお互いに落ち着き、茜さんは自室で眠っている。  突然の発情に身体に大きな負担が掛かった様で、熱が出ている様だ。 「⋯俺はただ、同意が無いのに噛む訳にいかないと思っただけで。そんな事したら、俺は茜さんの傍に居れないんで」  そう返せば、親父さんは可笑しそうに笑うと「本当に変な子だ」と頭を撫でた。  
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