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「お客様、お目が高いですね……ここだけの絶対の秘密というやつですが」  いささか寂れ始めている商店街の一角にある、いかにも老舗感が漂う小さなアンティークショップ。吊るし売りされていた十字架のペンダントを手に取った若い男に、店主は静かな声をかけた。  それなりに年代物のようで装飾も上質だったが、値札のタグを見る限り、名のある作品ではないのだろう。手頃なファッションアイテムとしては、妥当な価格といったところか。 「その十字架のペンダントは、私の祖母が海外のとある没落貴族から仕入れた物らしいのですが、その祖母曰く、持ち主の強い想いを封じ込め、想いを叶える不思議な力があると代々伝わっている家宝だ、と聞いたそうですよ」 「へー。そりゃすごいですね」  ……まさか。ま、よくある話ではあるけど。  男は感心したような様子で十字架ペンダントを見ながら、心の中で苦笑する。迷信みたいな話は、古い工芸品に大方ついてくる風物詩、といったところか。 「……そんな大したものなのに、こんな値段でいいんです? この値段なら買いますよ、このありがたそーなペンダント」  理由はよくわからないが、男はこの十字架ペンダントに不思議な魅力を感じて、何か見えない力に流されるような感覚を覚えながら、財布を取り出した。
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