「6」

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ウウッ、ウーーー! ウー、ウー、ウウーーー!! チッ、またか、、、これで3件目だ。 赤い閃光に照らされた『KEEP OUT』の帯を(くぐ)ると、見るにおぞましい光景が眼前にそびえた。 被害の状況から、同一人物の犯行に間違いない。いや、正確には人物なのかグループなのかは現状では不明だ。ただ案件が案件だけに、マスコミには最低限の情報のみ提供していた。詳細は明かしていないので、模倣犯ということは考え難い。 「鑑識はまだか?」 白黒ツートンにペイントされたセダンに目を遣ると、運転席に腰を下ろす男が視線を送りながら頷いた。男の口元は絶え間なく動いている。 「もうすぐ到着するとの事です」 全開された窓から身を乗り出して男は答えた。左手には黒光りを放つ無線機が握られている。男の名前は「十六夜(いざよい)」、俺の後輩だ。 聞いてはみたが、鑑識などコレっぽっちも当てにはしていない。犯人を特定出来るだけの手がかりは出ないだろう、そんな事は分かっている。しかし決まりは決まりだ。俺はため息を吐き出した。 「警部、所轄に応援を要請しました」 無造作に開けられた運転席のドアから身体を滑り出すと、こちらに歩みを進めながら十六夜は告げる。 180cmはあるだろう、細みのシルエットが長身とは思えない軽い足取りで近づいてくる。黒色を基調としたスーツを身に付けているため、より一層引き締まって見えた。 「よし。いいか、猫の子一匹立ち入らせるなよ。ホトケを決して市民の目に触れさすな」 「はい、分かりました」 暫くすると、けたたましいサイレン音を従えた緊急車両によって、まだ開けきれぬ夜の(とばり)はこじ開けられ、静寂はかき消されていく。 俺の名前は『納谷(なや)』、凶悪犯罪を専門に扱う警視庁特殊部隊の刑事だ。
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