「6」

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事件発生から一夜明けて、県警察本部に対策本部が設置された。 「現場は閑静な住宅地の一角にある『三毛猫』という喫茶店です。第一発見者である店主の話しによりますと、事件当日は通常どおり営業しており午前11時に開店、店を閉めたのは午後8時前だということです。 閉店後、店主は銭湯に向かい、帰宅したのは午後10時過ぎ。玄関の鍵を開けようとしている時、足元に赤黒いシミが広がっていることに気づき頭上を見上げたところ、変わり果てた姿のホトケを発見したという事です」 タバコの煙が立ち込める会議室。十六夜(いざよい)は淡々とした口調で調書を読み上げていく。 「店主の悲鳴を聞きつけた妻が110番通報したのが午後10時30分頃。店主はその時のショックが原因で現在入院中です。こちらが現場写真になります」 十六夜が右腕を軽く挙げると同時に、部屋の照明が落とされる。それを合図にロールスクリーンに明かりが灯された。スライドが映し出された瞬間、会議室の空気は凍りつく。当然の事だ、そこにはあってはならぬ物が映し出されていたのだから。 モザイク処理が施されてはいるが一目瞭然である。店の顔とも言える看板が、『三毛猫』の「三」の文字が大小二本の赤黒い縦線によって血塗られ、おぞましい「五」の文字を形取っていた。 「閉店時、照明を落とす時には異常無かったとの証言から、犯行時刻は午後8時から店主が帰宅した午後10時の間と推測されます。目撃情報は今のところ挙がっておりません。また遺留品は残されておらず、鑑識の結果、看板に付着していた液体の成分はフィットネスクラブ『三種の神器』、スナック『三蔵法師』の物と一致しております」 それを聞いて会議室は一気にざわつき出す。皆の興味関心はそこにあったのだ。わずか一か月の間に、立て続けに三件の凶悪犯罪が強行された。 「尚、看板は即日撤去され、喫茶店は現在休業状態です。怨恨の線も含め、聴き込み捜査中です」 十六夜の口調は依然、淡々としている。それに反し、俺の感情は熱く高ぶり抑えきれないものになっていた。 バカヤロー!怨恨なんて、そんな生温(なまぬる)いもんじゃねえ。 吐き気を必死に堪えて、心の中で呟いた。 これは国家に対する反逆行為、、、レクイエムだ!
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