58.結婚式

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58.結婚式

 優秀なマルク医師のお陰で、ジャンの手術は上手く行き、今ではすっかり元気な姿に戻っていた。  マルク曰く、 「生きようとする力は、私たち医師の予想を超えることがあります。正直、ジャン様の回復には驚きましたが、尊いものを感じました」  一年が経った春の日。  今日はペテルとマリエラ、シオンとフルールの合同の結婚式。  ノクスの街郊外の教会ということもあって、顔見知りの人たちが参列してくれている。  マリエラを助けてくれた宿屋の女将さん、パン屋の夫婦、テンラム舞踊団のイザークとサルタ、王都のゴーン商会の家族、商人のメルカトール、デンスの町のソティラス家族、グレンビー商会の家族とミトラ、ティアオ劇団からは団長のメネスとバドゥールが来てくれ、オールリウス伯爵様からは大きな花束が届いた。  結婚式会場となる湖の近くにある教会は森の中にあり、レンガ作りの大きな三角屋根が特徴で、少し離れた所には結婚式前後に家族や招待客などがゆっくりと過ごすことが出来る宿泊施設もあった。  シオンは行商の伝で教会の事を知り、フルールと結婚するならとプロポーズする前から決めていたらしい。  教会の敷地から続く石畳は湖のほとりにある庭園のチャペルの祭壇まで続いている。  教会の中でも結婚式が行われるが、お天気の良い日は庭園にチャペルを設置して式を行うことが多いらしい。  教会の隣にあるハナミズキの花は満開となり、フルールたちの結婚を歓迎してくれているようだ。  マリエラとフルールはお揃いのウエディングドレスを纏っている。  ヘッドドレスには母のオリビアが、クレマチスの花をアレンジした刺繍が施してあった。 「マリエラお姉さま、今日はよろしくお願いします」 「フルール様、その、お姉さまとは、ちょっと···」 「フルール様なんて言わないで、名前で呼んでね、お姉さまっ」  フルールのからかうような言葉にマリエラは真っ赤な顔で俯いた。  幸せいっぱいの花嫁たちの部屋にジャンが入って来た。 「お父様、今日はよろしくお願いします。約束を守ってくれてありがとうございます」 「両手に花とはこういう事だったんだね。私は幸せ者だね」  ジャンは満面の笑みで右腕にフルール、左腕にマリエラをエスコートして石畳を歩き、チャペルに向かっている。  石畳の途中からはバージンロードに変わり、わぁという歓声と拍手で三人は祭壇まで歩いていく。  祭壇には新郎二人が待っていた。  誓いの言葉を終えた新郎新婦は幸せな微笑みを浮かべ輝く未来に希望を抱いていた。  end
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