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ふっと目が開き、僕はゆっくりと立ち上がる。倒れている間、夢を……いや、彼女の記憶を見ていたようだ。
ロッキングチェアの彼女は相変わらず美しい歌を奏でている。
「……君は、リーナ?」
彼女は僕の問いかけなどには答えず、ただひたすら歌うだけ。
「とても綺麗な歌声だね」
そう言うと、彼女の片目からツーっと涙が一筋流れる。
僕が、このリーナの為に出来ることはきっと何一つないだろう。彼女はこの先も二度と帰ってこない友の為に歌い続けるのだ。
部屋を出て、屋敷を出る。
白い花畑を歩きながら、振り返る。
白亜の洋館には魔女の呪いなどなかった、あるのは魔女を待ち続ける悲しい歌姫の歌声だけだ。
《終》
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