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2.量産型カフカ
「絶対に秘密だよ」
今度は一昨日の雪が汚く電柱の根元に残っていた日のことだ。
「うん、最近また寒くなったね」
入学以来ずっと同じクラスだから、お互いの言うことをスルーして会話するのも平気だ。
「昨日、交通事故に遭って転生した」
量産型カフカのように簡潔な出だしだなと感心した。なぎさに論理的矛盾を指摘しても仕方ないんだけど、
「この世界が異世界だったんだね」と言う。
「違うよ。あんたがいるだけで異世界らしさがなくなるじゃん」
常識的な人間で悪かったな。じっくり攻めていく。
「黒猫を追いかけて道路に飛び出した?」
「うん、よく知ってるね」
「猫は一命を取り留めた?」
「もちろん。そうでないとチート能力もらえないじゃん」
ぼくはほくそ笑んだ。
「すごいね。能力見せてよ」
「うっ。……今、新月の夜に見せれるよう心を込めて準備中だ」
ラーメン屋か?
「発動するのにいろいろ条件があるのかな?」
「条件というか呪物がね」
「呪物か。指輪とか?」
「うん、アクスタとか」
「缶バッチとか?」
「だね」
その後、話の続きは聞いていないので、なかなかお目当てのくじが当たらないのだろう。
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