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1.中世ポーランドのお姫様
「絶対に秘密だよ」
学校帰りに散り際の桜並木を歩きながらなぎさはそういった。
またしょうもない秘密だろう。今に始まったことじゃない。
最初は、確か秋のことだった。
「あたしの前世はね、中世ヨーロッパの貴族のお姫様なんだよ。尊敬していいよ」
「中世っていつだよ」
「1世紀……かな」
目が泳いでる。歴史の先生泣くよ。
「1世紀は中世じゃないって。12世紀とかかな?」
「うん、そう。ほぼ12世紀」
「ヨーロッパってどこだよ。西の方? 東の方?」
「東の方だよ。決まってんじゃん。葛飾とか」
頭痛くなってきた。そりゃインバウンド増えてるけどさ。
「23区ってなぎさ的にはヨーロッパなんだ」
「本気でそう思ってるわけじゃないよ。たけるはわたしのことアホの子と思ってない?」
「アホかどうかは定義次第でしょ。東だとドイツとかポーランドかな」
なんかメモ取り始めてる。歴史のノートをちゃんと取った方がいいんじゃないか。
その日の放課後には前世はポーランドのお姫様ナギサヴィエタでがロシアの貴公子と恋に落ちる話を披露していた。でも、宮殿のお庭での貴族のお嬢様たちのお茶会のようには見えなかった。
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