第1話

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第1話

 いよいよ、春本番。今年も花見の季節がやってきた。  桜の名所にやってきた俺は、桜の木の下にブルーシートを敷き宴の準備を始める。  今日は、職場の人たちと花見をする予定なのだ。仕事では毎日顔を合わせているが、こうしてみんなで集まってワイワイやるのは久しぶりだ。  俺はワクワクしながらみんなが来るのを待っていた。 「おーい、こっちだ! 早く来い!」 「あ、小泉先輩。もう来てたんですね」 「おう、今日は待ちに待った花見だからな」  最初にやってきたのは、後輩である宮田だ。  彼は靴を脱いでブルーシートの上にあがると、枝につく桜の花を興奮した様子で観察し始めた。そして、感嘆の声を上げる。 「いやー、すごいですね。桜って、間近で見てもこんなに綺麗なんですね」 「綺麗だろ? でも、本当の花見はこれからだぞ?」 「はい! 早く飲みましょう!」  宮田はそう言うと、自分のバッグを漁り始めた。すると、中からビールやチューハイの缶がゴロゴロ出てくる。  だが、先に騒いで疲れてしまってはもったいない。俺は冷静になって宮田をなだめる。 「おいおい、まだ他の人が来てないだろ。もう少し待ってろ」 「ああ、そうでしたね。すいません」  宮田はそう返すと、バツが悪そうに缶をバッグの中にしまった。 「すいません、ちょっと遅れちゃいました」  次にやってきたのは同僚の井上さん。人懐っこくて、いつもニコニコしている女性だ。 「ああ、大丈夫ですよ」  俺は微笑みながら答える。程なくして、他のみんながやってきた。 「いやー、遅れてすみません」 「いえ、全然大丈夫ですよ。さあ、座ってください」  俺がそう言うと、みんなは靴を脱いでブルーシートの上にあがった。そして、それぞれ持ってきたものを並べ始める。  おつまみやお菓子などが次々と並べられていく中、俺はビールの缶を開けた。すると、みんなの注目が集まる。 「それじゃあ、乾杯しましょうか? ……カンパーイ!」  俺がそう言うと、みんなが飲み物を高く掲げた。そして、一気に飲み干す。冷たいビールが喉を通る感覚が気持ちいい。  それからは、みんなでワイワイと騒ぎながら花見を楽しんだ。桜の花びらが舞い散る中、俺たちは楽しいひと時を過ごした。  悪酔いした俺は、桜の枝を持って自撮りをしようとスマホを手に持つ。……が、うっかり枝が折れてしまった。 「あっ……折れちゃった」 「あちゃー、やっちゃいましたね。ま、仕方ないですよ。それより、先輩。もっと飲みましょうよ!」 「そうだな。とりあえず、折れちゃったけど記念撮影だけでもしておくか」  呟きながら、俺はスマホを構えて自撮りをする。 「よし、これでいいか」  俺は満足しながらもスマホをポケットにしまうと、桜の枝をぽいっと投げ捨てた。  再び、花見を楽しむ。楽しい時間はあっという間に過ぎていった。  やがて日が傾き始め、空が茜色に染まっていく。 「もう、こんな時間か。そろそろ片付けようか」  俺はそう言うと、みんなに声をかけた。すると、全員が同意するように片付け始める。 「ありがとう、みんな。本当に楽しかったよ」 「こちらこそ、ありがとうございました」 「じゃあ、また明日ね」  別れの挨拶を交わすと、俺たちはその場で解散した。  宮田とは方向が同じなので、一緒に帰ることになった。 「それにしても、今日は本当に楽しかったなぁ」  俺がそう言うと、宮田も同意するように頷く。 「ですねー。あ、そう言えば……」  ふと、宮田が何かを思い出したように言った。
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