お花見

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 黒い地面に散り積もった桜が風で舞い上がった。宙で舞い渦を巻く。  ピンク色の渦は一つ崩れそうになるとまた一つでき、筒状に渦を巻き、崩れ、また渦を巻き、三つ目でハラリと落ちた。 「また見来たいね」 と、彼女が言う。  それは期待してくれてるということだろうか。僕と? また歩いてくれるの? 二人きりで?  まさかね。いい気になるのは危険だ。僕は笑って頭を横に振った。「無理だよ」 「来週には葉桜になっているから」  サクッと答えると君は泣きそうな顔で立ち止まった。僕は君の肩に自分の体を優しくぶつけた。 「今度、ツツジが咲いたらね」 と、手を握る。  僕らが歩くすぐ横の植え込みのツツジは赤く潤んだ蕾をもったりとかかげている。多分数日で開くだろう。暖かければ明日にでも。  彼女の顔から不安が消え、(呆れた!)と言いたげな表情が浮かんだ。手慣れているとでも思ったのだろうか。彼女の耳にさがるピアスが薄桃色に光って揺れる。  大丈夫、分かってるよ。これはlikeだってこと。  少しガッカリするくらいでちょうどいいってこと。  深呼吸の後、自分でも驚くくらい楽に息を吐けた。 〈了〉
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