お花見

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 片耳に桜の花びらを模した白蝶貝のピアスをつけていると、 「ね、どっちがいい?」 と、覗き込む鏡の奥、部屋着姿の妹が青とオフホワイトのワンピースを両手に聞いてきた。化粧もしていない顔は焦りでこわばっている。ちなみに私はデートでもなんでもないので普段通りの白の長袖Tシャツにブラックジーンズ。つまり色気がない。 「どっちも似合う。とっちを着ても可愛いよ」  そう答えたら妹がぷぅっと頬を膨らました。 「無責任に褒めるんだから!」 「きっと彼もそう言う」 「本当に?!」 「はんと」  私は鏡から目を逸らす。  この春から妹の恋人になった同級生のことを三年ばかし(ちょっとイイな)なんて思ってたこととか、(あーあ、まさかウチの妹がトンビだったとはね)なんて昨日の夜ベッドで仰向けになりながらぼんやり天井のシミを数えてたこととか、どうでもいい事だし。  そんなことより大事なのは、昨日、桜の開花宣言があったこと。
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