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「あれ、草介は?」
「さあ、またどっかで怠けてるんじゃないかい?
あの馬鹿息子…そろそろ忙しくなる時期だってのに…。
昼時だし美世、草介を呼んできてくれるかい?」
「はーい、おばちゃん、安心して。
すぐに捕まえてきてあげるから。
草介ったら、昔から怠け者で、本当に仕方がない奴ね。」
「美世には昔から、草介の事で面倒かけてばかりだねぇ…」
「気にしないで。好きでやってることだから。」
美世は、どうせいつもの場所だろうと歩き出す。
都から離れた田舎の村。
その村は山奥にあり、閉ざされた場所にある。
美世は生まれてから村を出たことがなく、村の者達は皆、家族のようなものだ。
いつもの場所に、草介はいた。
そこは村のはじの方にあって、何も無いので人気がない。
今の時期は桜が綺麗に咲いている。
いつもの草介の怠け場所だった。
「草介、またここにいた。
よく懲りもせずに怠けられるわね。」
草介は美世の顔を見て、気だるげにあくびを噛み殺す。
「…そういうお前は、いつも俺が気持ちよく寝てると、決まって現れる。」
草介とは村で唯一の同い年で、幼馴染みだった。
生まれた時からずっと、兄妹のように接してきた。
草介の母はこの村の人間だが、父は都から来た者なので、草介は村で浮いている。
友達も美世くらいしかいないのだ。
「いつも怠けてるから注意してあげてるのに。
まさか、わざとだったりしないわよね!?」
草介は意地が悪い顔で首を傾げていた。
まさかの確信犯だ。
「草介~!」
「おっと、美世が怒った。怖い怖い。」
そう言いながら逃げ出す草介を、美世は追いかけていた。
「逃げないでよね~!」
「やなこった。」
昔からどこか冷めていて、人生を舐めたような面をしていて可愛げがない。
だけど昔からそんな草介を、美世は放って置けなかった。
「あ、こら!中々戻ってこないと思ったら草介と美世!
二人とも、遊んでないで昼飯にするよ!」
「あー母ちゃんに見つかった。美世、お前のせいだからな。」
「そもそも怠けていたのはそっちでしょ。
自業自得よ。」
草介の母に見つかり、美世と草介は顔を見合わせて笑みを溢してきた。
昔から、妙に気にかかって仕方がない幼馴染みだった。
いつかは、草介となら夫婦になるのも悪くはないのかなと、美世はそう思ってた。
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