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「…草介。」
だが、村の者達の顔は渋かった。
「美世は村長のところの長男に嫁ぐ事が既に決まってる。
今さら若いお前ら二人がどうこう言っても、無駄な事なんだ。」
「なにそれ…私は聞いてないわ…っ」
美世が言った時、村人が美世と草介を引き離す。
「離して!」
「美世…!!」
美世は草介がここまで必死なのは、初めて見た。
手を伸ばすが、届かない。
草介は悲痛な表情で美世を見つめていた。
そして美世が草介を見たのは、これが最後になった。
美世はどこかに無理矢理連れて行かれ、倉に閉じ込められた。
その間、美世は色々と試みたが、倉から脱出する事は出来なかった。
一日に数度食事が運ばれるが軟禁状態であり、外で何が起きているのかは全くわからなかった。
最初は美世は抵抗したり、現れる者と話を試みたりしたが、そのどれもが無駄だとわかると、やがて何もしなくなった。
美世がこうしている間も、外では様々な事が動いている。
それだけはわかるが、美世に何も知らされる事はなかった。
きっと、草介が生け贄に選ばれたのは、父が都から来た、村のよそ者だからだ。
草介の父も、村では何かと不遇な目に遭っていると、草介から聞いていた。
だからと言ってそんな事をしたところで、村が滅ぶのはきっと、変わらないだろうに。
どれだけここにいたかはわからないが、ある日、ようやく外に出された。
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