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「現有の物資を確認し、役割分担を決める」
正式に緊急時のリーダーを拝命した螺節が短い指示を下した。霧深いこの天候の中で慣れない山道を動き回るのは自殺行為だ。そしてそれは敵も同じはず。満足な追跡が難しいのはあきらかだから、当面は待機するに違いない。だからこちらも耐久戦初日の今日はこの洞窟で身を潜め、準備を整えるのに専念することになった。
昨夜螺節が略取してきた小魚の丸干しを加え、洞窟内に備蓄した食料は優に十日分あった。逆に、武器に関してははなはだ心もとないことが判明した。弓が一張に矢は二十本。長剣も真暮が持つ一振だけで、短剣も螺節が腰に下げた二匕のみ。ほかに武器になりそうなものは学生たちに持たせていた鍬とスコップが二本ずつ、片手で扱う小さなシャベルが三丁、それに丈夫なロープが二巻き。
「およそ戦争できる装備じゃねぇな。エルフのねえちゃんは、なんか攻撃魔法とか持ってないのかヨ?」
真暮の乱暴な物言いに腹を立てるでもなく、キャラルは弱々しく首を振った。
「ごめんなさい。そういうのはまったく教わってないんです。治癒魔法なら少しはできるんですが。流血を止めたり傷口を塞いだり、あとは痛みを和らげることくらい……」
「あー、まあ必要になったら頼むわ。てか、ほんと役にたたねぇな、あんた。召喚だって、こんなどぉっしよーもないカス掴んでくるだけだしヨ」
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