第五話 慰撫

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 ふと思い立ったあかりは、毎日チェックしていたマンガサイトをタップした。画面は普通に表示された。いつも開いている自分の本棚ページ。次回八月十一日更新となっているお気に入りマンガのサムネイルをぽちっとする。  画面の背景は灰色になった。真ん中には白い窓。思わず画面を戻すと、いくつかのサムネイルが非表示になっていた。構わず順番にタップするあかり。しかし遷移先の表示はすべて同じだった。  通信エラーが発生しました。通信環境をお確かめのうえ、再度実行してください。(エラーコードN004)  今度こそ、あかりは真に絶望した。 ―― もはや私があの珠玉のコンテンツたちの続きを読むことは、未来永劫できないんだ。  好きだった連載マンガの作者が急死して打ち切りになったときの落胆が蘇る。 ―― 誰かひとり、どれか一作なんて甘いもんじゃない。私の好きな作品もそうでない知らないものも、とにかくすべてが打ち切りになって二度と新作は出されない。ここはそういうところなんだ……  あかりは慟哭した。声は出さずに。  友だちのいない自分の十九年間を支え続けてくれたマンガたちが、完全に喪われてしまった。その事実に耐えかねて、あかりの心の背骨はぽっきりと折れてしまった。
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