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気がつくと、目の前に黒い影があった。深い紺色で切り取られた洞窟の入り口に小さく覗く満月。そのバックライトが金色の縁どりを淡く浮かび上がらせる。
薄い鈍色の三白眼がすぐ近くで見つめていた。あかりは思った。黒ダイヤみたい。
『……わんこ、くん……?』
螺節は手を伸ばしてあかりの頭を撫でた。普段の無愛想な冷徹さとはまるで違う優しい手つきで。大型犬が転んだ子どもに寄り添って傷口を舐めるように、何度も何度も。
じんわりと伝わってくる柔らかな熱を感じながら、あかりはゆっくりと目を閉じた。今なら寝られるかもしれない。
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