27人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
休日。
久しぶりに家でのんびりしようと歩夢が言うから、私は朝から歩夢のアパートに入り浸り、一日中ネットゲームをしてダラダラ過ごした。
昼はコンビニ弁当で軽く済ませたけど、夕飯くらいはちゃんとしたのが食べたくて、二人で作ることになった。
メインのハンバーグを私が作り、スープとサラダは歩夢が作る。
狭いキッチンで二人身体を寄せ合いながら、わいのわいのと楽しく作った。
ようやくハンバーグが焼き上がり、いざ食べようという時に、歩夢が突然言ったのだ。
「風花の卵焼きが食べたい」と。
歩夢は、私が作る甘い卵焼きが好きなのだ。
これで十分じゃん? と言う私に、歩夢は駄々っこのように、いいじゃん作ってと甘えてきた。
「仕方ないなぁ」
歩夢のこういうところ、嫌いじゃない。
私はニヤけそうになるのを堪えながら、しぶしぶという体でキッチンに立った。
卵を三つ、ボウルに溶く。私のレシピは、たっぷりのお出汁に醤油を少し。そして、砂糖はちょっと多め。
「お砂糖取ってくれる?」
「はいよ」
歩夢が砂糖ポットを手渡す。スプーンですくってボウルに入れるところで、私は気付いた。
「ねえこれ、塩じゃない?」
「あ、バレた?」
えへへ、と肩をすくめ、「嘘噓。本当の砂糖はこっち」と歩夢は砂糖のポットを手に取った。
「またそんな嘘……っ」
その瞬間、私の堪忍袋の緒が切れた。
最初のコメントを投稿しよう!