四月

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 別に、付き合ってるとかそういうんじゃない。  バイトの先輩で、たまたま好きなアーティストが一緒だっただけだ。  休憩室でスマホ見てたら覗いてきて 「お前そのグループ好きなの?」 「あ、はい」 つーか睫毛長ぇなこの人……。  宅配便の仕分けより、オシャレカフェの店員なんかの方が似合いそうだと思ってると 「マジで?めっちゃいいのにあんまり知ってる奴居なくてさー。こないだ出たアルバム聴いた?」 初めて話すのにめちゃくちゃ身乗り出してくる。 「もしかして夏のツアー行ったりする?」 「あ……行きたかったんすけど、チケ全敗で」  ぶははは、となぜか大笑いされた。 「……それ笑うとこっすか」 「いや、俺も取れなかったんだけど、チケットトレードで1公演だけ取れて」 「自慢すか」 「いや、真面目な相談。取れたんだけど二席分のやつでもう一枚どうしようかと思ってたとこ。お前行かない?」  断る選択肢はなく、どんな人かも分からないうちに一緒に地方遠征する予定が出来て。  気がついたらすっかり都合いい後輩になって、そのあと相手が就活で忙しくなったのもあり 「今度のチケットとっといて」 「あー、土曜日10時でしたっけ、発売」 「頼む。俺その日も面接だから」 「……いいっすけど」 「取れたら飯奢るから」 「え、まさかの成功報酬?」 「当たり前だろ」 「だったら、どうせならチケ代半分とか」 「社会人になったら持ってやるよ」 だんだん都合いいパシリみたいになり、今は花見の場所取りまでやらされてる始末だ。
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