三月

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   駐車場行って、車の中でキスした。  華奢な体抱きしめると細い声で俺を呼ぶ。 「……薫さんさ」 「なに」 「友達なら別れることないから言わせたくなかったとか、可愛い過ぎんだけど」  頭叩かれた。 「てっ」 「っ……おま、ゆーな。もう。しね」  語彙力。 「毎年必ず会えるようにお花見チケットとか」  今度は唇噛みつかれた。  実家(うち)の犬のがよっぽど躾がいい。  「っ……んぅ」  抱きすくめて深く唇合わせると、首にしがみついてくる。  なんだこの可愛い生き物。 「薫さ……」  勢いで太腿に手触れたら、思い切り叩かれた。 「ってぇ!」 「っ……調子乗んなバカ!駐車場でどこまでヤる気だよ。コロすぞ」 「……サーセン」  車出して、通り沿いの桜横目に俺は言った。 「あれさあ、付き合っても有効なんでしょ?期限ないし」 「……だったら何」 「いや、もし喧嘩したりしても、あれあったら必ず会えるなって。……それも計算?」 「別に」 「……そっすか」 「……ただ、お前が卒業しても必ず会える理由が欲しかった。お前が帰って苺農家継ぐって知ってから、ずっと」     『お花見チケット』了
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