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「ちわーっす」松葉杖をつきながら、お客さんが入ってきた。
私は思わす二度見した。アズマさんだ。怪我してる…慌てて奥に引っ込んだ。
「おう、やっときたか!」大将がカウンターから声をかける。アズマさんが大将の正面のカウンターに座った。
「ほら、はるちゃん、注文とっておいで」さや姉さんが私を奥から押し出した。
落ち着いて、私。普通に、普通に、お客さんだから。
「いらっしゃいませ、ご注文は?」緊張がにじみ出る。
「この前はありがとうございました。とても楽しかったです。えっとぉ…生ビールもらえますか?」またアズマさんが微笑む。
「こちらこそありがとうございました。生ビールですね」私は伝票を書き、急いで奥に引っ込んだ。
ビールを持って行く。ジョッキをカウンターの上に置いた。
「ありがとう!」この前よりもちょっとテンションが高いのかしら。
「足、どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「いや、ちょっと鈍臭いことしまして。足の骨を折ったんですけど、ほらもうこの通り、ビールも飲めちゃうぐらいに、問題ないです」
アズマさんは言葉通りビールを流し込んだ。
「無理しちゃって、もう、偏屈だね、お前は」大将が横槍を入れる。
「兄さんの教育が行き届いてるんですよ。きっと」
「俺はそんな偏屈じゃあねえし、なあ、はるちゃん?」
「えっ…ああ…はい…、お大事に…」
私はまた急いで奥に戻った。
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