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「あの、でもなぜこの場所に私がいるのをご存知だったのですか……?」
「実はここ、王立学園に在学していた頃からの僕の息抜きの場所なんだよね。だから以前から君がいつもここで一人で過ごしているのは知っていたよ」
「えっ……」
「この前婚約破棄の場に居合わせたのも、王立学園に政務で来た合間に偶然ここに息抜きに立ち寄ったからだしね」
思わぬ事実を知り、私は目を見開く。
まさかここを利用している人が私の他にもいたとは。
しかもそれが王太子殿下だとは驚きだ。
在学時から来ていたということは、王太子殿下は私よりもずっと前からこの場を利用していたのだろう。
つまり王太子殿下の縄張りを後から来た私が荒らしてしまったのではないだろうか。
……なるほど。だからね。興味を持たれたというより、目を付けられてしまったということだったんだわ。
「王太子殿下の息抜きの場所だとは存じ上げず申し訳ありません。ご不快な思いをおかけしましたことをお詫び申し上げます」
不可解に思っていた先日の王太子殿下の言動の理由に思い至った私は、すかさず謝罪の言葉を述べる。
これで今後はこの場所を利用しないようにさえすれば、問題は解決するだろう。
王太子殿下ともこれ以上出くわすことはないはずだ。
そう思ったのに、ことはそう上手くは運ばなかった。
「全然構わないよ。不快な思いなんてしてないからね。ふふ、むしろ君にはいつも楽しませてもらっていたよ」
王太子殿下がクスクス笑いながら、聞き捨てならないことを口にしたからだ。
……楽しませてもらっていた、って……?
頭の中に疑問符が浮かぶ。
いくら考えても王太子殿下が意味することが分からず、私は様子を伺うようにそろりと王太子殿下へと視線を向けた。
すると、王太子殿下は次の瞬間、晴れやかな顔でしれっと爆弾発言を投下した。
『聞かせてもらっていたんだ、君の独り言をね』
セイゲル語で放たれたその一言。
意味が分かるからこそ、絶句してしまった。
……うそ、信じられない……! 誰にも聞かれていないと思っていたあの独り言を耳にしていた人がいたというの!?
王太子殿下がセイゲル語を流暢に話している以上、独り言の内容まで理解されているというのはもはや疑いようもない。
身近にセイゲル語が分かる人がいないのもあって完全に油断してしまっていた。
恥ずかしすぎて、穴があったら入りたいくらいだ。
羞恥の念で顔に火がついたように熱くなる。
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