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19、帰還
それから、急いで城へ──と思ったのだけれど⋯。
ゆっくり回って帰ろうかと、リアムから提案されたので。アインちゃん達とは別れ、街へと来ていた。
勿論、フードありよ!
「あ、あの──。リム、手⋯⋯」
「手⋯離したらまた、離れてしまうから嫌。絶対に離さない」
「⋯⋯ッ⋯⋯」
あーもう死んでいいかな?死んで良いよね。
もう。萌え死ねるよ。ものすごく、心がポカポカして──あったかい。
私は改めて思った。
リアムが⋯大好きだなって。
見た目だけじゃなくて、人としても────
『なぁなぁ⋯?あの2人、なんなんだヨ?』
『知らないヨ。ただの、バカップルじゃないノ?』
おい!そこ!聞こえてるわよ!!
『『⋯⋯⋯!!』』
私の頭に隠れた2人だった。
それから、街を観光した。屋台や、日本で言う市場みたいな感じで、たくさんの調味料だったり、野菜や果物なんかも売っている。
とにかく賑やかと言える。
私は特に屋台に興味津々で色々、買ってもらった。お金は、あるから大丈夫と言っても聞いてくれなかった。
「んんー!すごく美味しい⋯!!」
「それは──よかたい。ところで、なんで部屋から消えた?」
「えっ、と⋯」
リアムが信用してると言ったメイド達に、突き飛ばされました。なんて言えないし。
そもそもだ。あの時に見たフリルが、本当にメイドの服なのかも分からない。証拠があるなら、まだしも⋯憶測で、ものを言うのは良くない事だ。
というわけで─────
「気分転換に、お掃除していたら⋯⋯!!あら不思議!!隠し回転扉があって、そのまま真っ逆さ───」
あっ!!やばい!!
貴族が、お掃除なんてしない!!掃除をするのは、メイド達の仕事だ。
そもそも、お掃除します!なんていう設定だって、いれてはいない。
「ソフィは掃除、するんだ」
「え、えぇ」
えっと、これは⋯セーフ?いやセーフなのか?
「まさか俺達と同じとは───」
「へ?」
「俺達も、自分の部屋は自分で掃除するんだ」
「そうなのですか!」
「客人を招いた時は、メイド達が行うけど」
「へぇ⋯」
自給自足?では無いけれど、ちゃんと自分の事は自分でって事かな。偉い。王族と言えど、そういう風習があるのは良い事だわ。
「ますます、両親が気に入りそう⋯。おいとしては⋯嬉しかやけど」
「何か言いまして?」
「なんも、言っとらんばい⋯⋯!!」
あらあら⋯方言がモロにでているわよ!あー可愛いっ!!
「そうなのですね」
「っと、そろそろ⋯帰るたい」
「はいッ──!!」
そうして、私達は王宮へと帰ったのでした。
「只今、戻りました」
「よくぞ、無事に帰って来てくれた」
「ソフィ、貴女もご無事で良かった⋯⋯」
「まさか、騎士より先に⋯お前が連れて帰ってくるとはな」
「己の義務を果たしたに過ぎません」
「それだけでは無さそうだが。客人に何事もなく良かった⋯」
「あ、あの!私は大丈夫です」
「いいや。すまないが、この者たちを呼ぼう。さぁ入ってこい」
そう王様に言われ入ってきた人達は私を世話する?メイドさん3人だった。メイドの3人は、真っ青な顔をしている。その表情が何をしたのか物語っていた。
「さて、此処に呼んだのは、何故か分かるな」
「「「はい⋯⋯⋯」」」
うわぁ───。これは、えっと⋯。あの、かなり悪いフラグですよね?!こう、もうクビだぜ!!みたいな?!?!
そんな危機的な状況?なのでは??!
このメイドさん達。
「何故、客人のソフィ殿が⋯突然、居なくなったか。説明してもらおうか??」
「そ、それは⋯⋯」
メイド長が、私に初めて会った時の覇気みたいなのが全くなく。しどろもどろに話そうとする。
まっさかーこの人が?でもよ?とにかくあの時。上手いこと押されなかったら、アインちゃんは助かってないし。
アインちゃんのお母さんも助かってない。だから、私としては『ありがとう』の一言に尽きるのです。まぁ結果論なんだけどね。
「あの⋯発言をお許し下さい。王様、この方達は何もしていません。私は⋯たまたま壁を押したら、その壁が回転扉だったらしく真っ逆さまに落ちていっただけなのです。なので、私の不注意ですし。この方達が罰せられる必要も全く御座いません」
「「「⋯⋯⋯⋯!?!?」」」
3人に驚きの顔が浮かび上がる。
「だが⋯!!」
「本当に、たまたまですので。それに、この事があって、この国を知ることが出来ました。街に住む人達も、街から離れた”町”に住む人達も皆さん素敵でした。それを知れた事が何よりの感謝と言いますか。来た甲斐が有ると言いますか⋯⋯」
あー上手いこと言えない。一応、貴族としてのマナーは、ある程度習ったとはいえ⋯。
やっぱり中身はソフィではなく”私”なのである。それに、この物語に書いていない子達とはいえ⋯⋯嫌な思いになるのも作者としてちょっと遠慮したい。
私が生み出した世界の人物は私以外必ず不幸に、ならないのだから。
「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」
王様と王妃は顔を見合わせて───
王族として非公式の場であるけれど、頭を下げてくれたのだ。
「!?!?⋯えっ!?頭を、あげて下さい!!」
「俺からも」
「えっ!?リアム様?!」
リアムまで、頭を下げる。
うぅ⋯⋯⋯なんて!!!!!素晴らしい!!民思いなんだ!!!
「私には、頭を下げられる理由も御座いません。ですから、お顔を上げて下さいませ。お願い致します」
メイド3人は、もう泣いていた。
えーっと、なんなんです?えっ、これ私が悪い?!とりあえず、王様と王妃とリアムは顔を上げてくれた。
「⋯⋯リアム。ちょっと、こちらへ」
何故か、リアムを近くに呼ぶ王妃様。その後2人でゴニョゴニョと話をしている。何を言ってるの⋯?聞こえない。なんの話をしているんだろう⋯。聞こえない話が気になる中、王様に問いかけられる。
「ソフィ、本当に良いのだな?」
「はい!」
「恩に着る。という訳で、ソフィ殿の計らいにより⋯⋯今回の件は不問とする。ただし次は無い──。よく覚えておけ。では、皆の者。退室してよいぞ。ただし、其方等3人は謹慎を言い渡す。良いな」
「「「はい⋯⋯」」」
ふぅ⋯⋯良かった。
そんなこんなで、ふと王妃とリアムを見たら
王妃様が不敵に笑っていた⋯⋯。あ、あれは肉食系だわ!!!!!
私の勘がそう叫んでいるわ!!
2人が、どんな会話をしていたのか結局分からなかった。そのまま、話しを終えたリアムと共に部屋へと戻ることになった。
ただし、あの部屋ではなく⋯別のお部屋に。部屋に入った途端、リアムが謝罪を言ってきた。
「ソフィ⋯⋯本当にすまない。そして、ありがとう」
「えっ!?いやさっき謝罪、頂いたわよ!?もう、やめてったら!」
「本当に、ありがとう」
「うん!」
私の嫁は、そうでなくっちゃ!!
それから、たわいも無い時間を過ごすかと思ったが、あの3人がやって来たのだ。あれ謹慎中⋯では?
「失礼、致します」
3人とも綺麗なお辞儀をして私の目の前にいた。
「えっと、どうしたのかしら?」
現在、リアムは不在。王妃に、また呼ばれたのです。だから今、私は1人。
「カンタレラ様⋯お話をさせて頂けますでしょうか」
お話かぁ、まぁいいや!
「いいですよ。で?御用件は?」
「謝罪をさせて頂きたく参りました」
「謝罪?謝罪は、いらないわ。だって、貴女達は何もしていないもの。私の不注意ですから」
「「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」」
「それに私はあの時、落っこちて良かったの。あそこで落っこちてなかったら、私⋯この国を知ることが出来なかったもの」
それに、アインちゃんやカインくんグレンさん⋯。村の人達にも会うことが出来た。
「だから、貴女達は何も悪くない。それに、分かるし⋯と言ってしまうと良くないわね」
私の言葉に対して、何か言いたげだ。
「⋯⋯そうね。どうしても、謝りたいって言うのなら、私のお話し相手に、なって下さらない?」
「「「⋯⋯⋯!!私達で良ければ⋯喜んで」」」
「どうもありがとう!!」
私は満面の笑みになった。それから、リアムが戻ってくるまで3人と共に話し込んだ。大いに盛り上がった。なんせ、メイドさん達は歳上だし。
でも、私の見方が変わったのか、いろいろと沢山、この国の事についてだったり、自分たちの事だったり⋯話をしてくれた。
そこへ戻ってきたリアムが唖然とするのも、無理もなかった。
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