1、転生先は黒歴史の悪役令嬢に転生していた

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1、転生先は黒歴史の悪役令嬢に転生していた

私の名は、ソフィ・カンタレラ。 と言っても、この人物。いえ、私は極悪非道の悪役令嬢なのである。なんか明るそうな名前、誰がつけたんだ(お前だ)!思い出したのは、ついさっきのこと⋯。 そう、私は現在7歳。思い出したキッカケというのは、小説でよくある熱にうなされた。誰かと会った。転けて頭を打って⋯というものでは無い。今さっき目覚めたら『あれ?なんかおかしくね?』ってなったのだ。何故なら自分の家じゃないし。 『なんだここは⋯!?』と思って、顔を見たら⋯。私が、前世で書いた小説(黒歴史)に転生していた。おい!!作者自分って、どういう事よ!! そこは、ゲームの世界に転生しました!!とかでいいと思うんだよ?!何故わざわざ私の痛い妄想で作られた世界に⋯⋯!!と嘆いている暇はない。 なんせ、この私が作り出した舞台(世界)は剣と魔法と聖女が存在するファンタジーの世界。そこで悪役の主役となってくるのが、この私。ソフィ・カンタレラなのだ!! ふぅ⋯説明するのも大変ね。 あ、言い忘れていたけど前世の死因は単なる過労死。20代後半で、あの世を去った。私は、アニメやBL⋯小説⋯様々なものが大好きで成人してからは仕事に明け暮れ推しの為に頑張る毎日だった。 ただし、成人するまでは⋯かなり痛い子供だった。理想の男性(2次元)に婚約者を作って脳内妄想を繰り広げていた。とても痛い黒歴史である。母親にかなり心配された。無理もない。 そんな私が幼い頃に作った小説なるものに転生してしまったわけだ。同じこと言ったなコレ。動揺しているのが丸わかりだ。いや、多分⋯同じことを言って自分が理解したいだけなんだと思う。 「どうしましょう⋯」 ベタな金色の髪にではなく、漆黒に紫がかった髪。黒のように見えて紫にも見える不思議な髪色をしている。ただ、他は似たようなもので⋯。目がつり目で唇もスッとしている。一つだけ違うのは青白いことだ。 うん⋯悪役令嬢ぽいわ。いや、死人か?化け物か?!いや私が設定したんだけどさ。でも、そこそこマシな顔してるわぁ⋯血色が良ければね。なんてのは置いといて⋯。ヒロイン⋯そう!! アイラ・ユーフィリア。 ものすごく⋯美少女なのである!!!もう私の理想と妄想を全てつぎ込んだ人物。彼女が涙すれば、周りにいる男共はポッと顔を赤らめ、どうした?!と駆け寄ってしまう程の破壊力を持つのだ。 とにかく、可愛い美しいのこの2つ。そして尚且つ、優しい!心に寄り添うことが出来る素敵な女性なのだ!! そして、ヒロイン⋯主人公のアイラは3人の攻略対象と1人は隠しキャラなんだけど。学園で攻略対象3人+1人と個別にイチャラブを繰り広げるのである!!ふんす!! 鼻息が荒くなってしまった。でも、私が書いたルートは⋯たった1人しか書けていない。自分の好きを集めて作ったキャラクターとヒロインのハッピーエンドまで。 ヒロインの相手がレン・クラトゥニィウス。もう名前が好き。そこからかい!!ってのは置いといて。彼は、無口系クールなキャラで誰にも心を開かない儚げな人、この世界の第一皇子である。 ただーし!!ヒロインのアイラだけには態度は違う!!勿論だけどね!!あることがキッカケで⋯心を開くようになるのです。 えっと、あることって言ったのは⋯思い出せないから⋯!!エヘ!書いたことくらい覚えとけよ!!って話なのは分かっているんです。でもね、覚えてないんです⋯。 覚えているのは私が学園に入ってから数々の悪事のみ。そして、バッドエンド。所謂、私の結末は全て最悪なものである。全て死ぬのだ。いやぁ⋯なんで私ったら、そんな設定にしたかな?!! いやまぁでも、私がした数々の所業を考えたら処刑されても文句は言えない。何かとヒロインを殺そうとしまくったし。軽い虐めで済めばいいけど、そういう度を超えていた。だって、ヒロインと攻略対象がイチャラブするには必須な事なんだもの!!仕方ないじゃない!! というわけで。 今の時点で、いや7歳なんですけれども。あと8年後に、やばい舞台が繰り広げられるわけですね。どうしよう!!どうしよう?!とりあえず、私の家は、公爵家になるのか?そこら辺、曖昧に書いたんだよな⋯。 ん⋯?ちょっと待って。私、大事な何かを⋯。あぁ───!!!?私、ソフィはレン様の婚約者だ。うわぁぁあ!!そうだった!!すげぇ、忘れてた!! そうそう!ゲームでも、よくあるような展開も好きで。とりあえずって感じで、悪役令嬢と皇子(推し)を許嫁⋯婚約者にしといてヒロインが現れてから悪役令嬢は皇子を取られまい!と徹底的にヒロインを殺るつもりで嫌がらせをしていくんだった。 その嫌がらせを行った彼女⋯ソフィは、イチャラブの犠牲になったのだ。私の妄想の生贄に──。 「色々、思い出してきた。今の状況も⋯。とにかく!今のうちに設定した内容を書き出さなきゃ」 私は、紙にスラスラと書いた。 "登場人物" ○ソフィ・カンタレラ《自分》 レン・クラトゥニィウス《第一皇子》の婚約者。15歳のクラモロンス学園に入学し、ヒロインに対する数々の悪事を行う。その後、必ず処刑される。 ○レン・クラトゥニィウス 第一皇子。成績優秀、眉目端麗、文武両道。一片の隙もない、クール無口系キャラ。 ○アイラ・ユーフィリア ベタな平民ではなく田舎に住む貴族様。だけど、かなり常識に疎いので⋯色々とやらかす。心優しい、純粋な乙女であり聖女様。めちゃくちゃ可愛い私がhshsしたい── 「何を書いてんだ私は!!」 って、私の絵では1パーセントも描けてなかったけどね⋯。心の中にいるアイラはチョー素敵な美女なのである。次つぎ! ○グラウス・ドルニシア 攻略対象その2 剣の扱いに長けていて、国で一、二を争う剣士。 褐色に赤色の髪が印象的な青年。 ○アクア・クリスネンス 攻略対象その3 魔法が得意な大魔道士。 青い髪というより、色素が薄い青色の髪を後ろで結び長髪。 ○スクラ・グレッチア 攻略対象その4 蜂蜜色の髪をふわふわさせた、カワイイ系美青年。 この子は隠しキャラ。ヒロインがあることを行うことで攻略可能になる。あることは、ちゃんと前世で書いていないので分からない。設定だけ、こう書いてたはず⋯。 自分の好きなキャラだけを攻略対象にしたわけである。都合のいい小説だな、おい。と、ツッコミを入れるのはやめにして。今の私は、王妃として相応しくなるべく知識や教養を身につけさせられている訳だが。 その話以前に、ワガママなムスメとして育ってきたようだ。私の記憶では。そんな設定、決めた覚えもないんだけども⋯仕方あるまい。使用人や両親にも迷惑をかけないと誓おうじゃないか。それより私は処刑されないように、どのルートにも入らず平穏に暮らす。 皇子ルート以外に、入ってしまったら素も子もない。ある程度は書いてたけども、完結したのは皇子編のみ。2人が幸せになる所までは、ちゃんとかけた。他のキャラクターは途中で止まったまま。 だから、その先になってしまうと⋯どうなるか分からないので本当に却下。だからだ、とりあえずは婚約破棄して貰えるように努力する!!よし!!妃になる為の知識や教養なんて今日から、おサラバだ!!いぇーい!! ────── ───── って、呑気に思ってた私が馬鹿だった。現在、朝食を食べた後にレッスン中です。『嫌だ!』と言っても、『何を言っているんだ、ずっと前から王子の為に!なんて言って頑張って来たんでしょう』と事実を突きつけられた。 私は幼い頃から理想の皇子、レン様を好きらしい。いや好きだった。今は過去形である。どんなに美形で⋯。しかも、自分好みに育とうが無理な話である。 ヒロインと推しが、ラブイチャを繰り広げている⋯!それを盗み見したいのが私の今の願望である(願望持ち込むな)。というわけで、丸一日レッスンに明け暮れた。 「疲れた⋯」 「ソフィ様。お茶をお入れ致します」 「ありがとう⋯ネル」 「!?」 ネルは、ギョッとした顔をした。なんせ私の口から、感謝の言葉が出たことに驚いたらしい。無理もない。いつもなら無言で、お礼なんて言わない。 舞台に上がる前から既に根暗な少女のようだった。でも皇子の前だけでは、カッコをつけていたようだ。なんつーキャラクターを生み出したんだ私は⋯!! 「それと、いつもありがとうね」 「?!?!」 さらに驚いたネルは、ティーポットを置いてガシッと私の両肩を掴んだ。 「熱がございますか!?!」 「いやない」 「御座いますよね?!」 「いやだから、ない」 「旦那様!!奥様!!」 そう言って、一大事とでも言うように、扉を開けて出ていった。おいコラ。感謝ぐらいで、なんだその態度はー!!って聞いてなかったな。それから、お父様とお母様が私の部屋にやってきたので、ここぞとばかりに言った。 「お母様、お父様。私、今までの態度を改めます。本当に申し訳ございませんでした。そしてひとつ⋯聞いて頂きたい事がございます」 そう話しただけで、2人とも目がキョトンとしている。いやぁ⋯間抜けズラとは、こういう事を言うのか。勉強になったわ!ってのは置いといて。 「私、皇子⋯レン・クラトゥニィウス様との婚約を破棄いたします!!!」 その言葉に、父も母も倒れた。いやいや、実際の話⋯7歳で婚約者がいる時点で、おかしいんだよ。それもどうやって決めたのか。まぁ、私のワガママらしい。ほんとに、よくある小説と同じだった。 皇子を見て一目惚れして、何とか取り付けた婚約らしい。へぇ⋯お前(ソフィ)はそういう経緯だったのか。というわけで⋯昔は一切、描いていないので入学するまでは未知なるストーリーという訳である。と、高らかに宣言した⋯その日。 私は医者に散々、あちこち調べられるのだった。
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