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2、お茶会で事件発生
皆様、ごきげんよう!
医者に調べられた、あの日から。
数日が経っていた。今日は、なんと⋯!!皇子との面会。というか、お城にお茶会へ呼ばれた。
行きたくもないのだけれど、駄々を捏ねても使用人の方々がドレスやらなんやら、綺麗に着飾ろうとしてくる。
悪役令嬢になるはずの私を今から着飾ったところで、なんの意味もないと言うのに。だって⋯マシな顔してるとは言ってもブスなんだもの!!美女には全くかないっこない。
将来はボッキュンボンと理想の体型になる訳でもなく、胸も小さい。背も、そこそこしかない。凡人体型になるのは、約束された未来だ。
いや待てよ⋯?今から鍛え⋯ておけば、牛乳飲みまくって、とりあえず大きくなるように!胸も揉んで⋯いや虚しいだけだけども。やってみる価値は、あるわね!!と、着替えをさせられながら、そんな事を考えていた。
そうして⋯お茶会へ。いざ向かうと、凄かった。他にも、たくさんの令嬢がいらして。ピンクやらオレンジ色なんとも可愛らしいドレスを来た子達がいた。
だけど───私は違う。
私のドレスは、紫のドレスだ。紫好きじゃないんだよな。せめて黒が良かったなぁ⋯⋯。と思っていた頃。数人の男の子達を個別に見つけた。
「!?!」
待って?!嘘でしょ?!あの髪色と表情は、まさか⋯!!!
グラウス・ドルニシア。
攻略対象2人目、将来剣士になる人。褐色に赤色の髪が印象的な彼に────
アクア・クリスネンス。
攻略対象3人目魔法が得意な大魔道士に将来なる。青い髪というより、色素が薄い青色の髪を後ろで結び長髪。この子は昔から長髪なのね⋯。
そして、スクラ・グレッチア
攻略対象その4人目。蜂蜜色の髪をフワフワさせた、カワイイ系美青年。この子は隠しキャラである。
嘘でしょ?!!まさか!?この攻略対象が全員揃うなんて!!!ヤバいぞ。これは本格的に。胡麻すりでも、しておくか?いや、そんな事をしたところでって話だし⋯冷や汗をかいていると、女子達から、ざわめきが起こった。
「レン様だわ!」
「本当だわ!今日も一段と麗しい⋯」
ポーッと、見惚れる彼女たち。私も釘付けになった。真っ白な純白の髪に水色の透き通った瞳。陶器のような真っ白な肌。見惚れない訳が無い。
なんせ!!私の理想を詰め込んだキャラクターだからね!!!だからといって、結婚は破棄しますけどね!!?というか、ここは本当にマズイのでは?よし、そうと決まったら逃げ出すしかない!!
颯爽と、お茶会を後にして庭へと出た。ふぅ⋯何とかなったわ。って、ただ逃げてきただけ⋯。本来なら挨拶しなきゃならないのだけれども。
庭の木々が、おおい茂るところで身を隠す事にした。お茶会が、終わるまで⋯ここで身を隠すのよ。なんて、こんな行動とったのが良くなかったのか、私はすぐに迫る危険に気づけなかった。
「いた⋯!!」
その声が、すぐ近くで聞こえたと思った時には既に遅し。知らない男達に攫われていた。いや、なんでよ!!?
────
──
声を上げても声が出ない。魔法とやらで何かしてるんじゃないだろうかと推測。両手両足は縛られてしまった。今できることと言えば⋯情報収集。そして、聞き耳をたてた。
「なぁ、この嬢ちゃん確かに黒髪だけど⋯なんか違うくないか?」
「えぇ⋯?そうか?」
「と、とりあえずコイツと。あ⋯!あっちにも、いるじゃねぇか!!」
「とりあえず、分かんねぇから2人攫っとくか!」
「そうだな!」
いや?!そんな明るく話す内容じゃないから!しかも多分、確実に私は間違って誘拐されたようだ。なんなんだ!!間違えるんじゃない!!!
そうして、もう1人連れてこられた子は男の子だった。
漆黒の髪に赤い瞳⋯黒を基調とした服を着た彼を一目見て、思わず───
「綺麗⋯」
声が出てないけれど、彼には伝わってしまったようだ。驚いた顔をした。そんな驚く必要が、あるだろうか??
ってとりあえず、口パクで伝わるのなら⋯。お互い協力してここから脱出を図るしかない。私は彼の服を縛られた手で何とか引っ張った。
✡✡✡✡✡
???side
おれは、何とかお茶会とやらから抜け出してきた。黒い髪と、この赤い瞳のせいで⋯この上なく悪く目立つ。暴言なんて、いつ何処へ行っても言われるのに。ただでさえ、両親から言われるのだ。勘弁して欲しい。
何故わざわざ皇子とやらの、お茶会に参加しなければならないんだ。そんな思いで何とか、お茶会から抜け出すことができた。そこで、おれより先に抜け出そうとしていた女を見かけた。
黒い髪に⋯いや紫?の髪をした少女だ。おれと同類か。跡をつけるつもりではなかったが、妙に気になってしまったので、彼女がいる方面へ行ったら───まさかの巻き込まれた。2人組の男に連れ去られ馬車の中に入れられた。
そこに居たのは、さっき見た少女だった。入ってすぐ、お互いに目が合う。そして彼女は俺に、こう言った。声は聞こえなかったけれど⋯俺には言葉が伝わった。
「綺麗⋯」
おれを見て綺麗だと言った初めての女だった。おれを見て気味が悪いだとか、不快な目⋯や蔑むような目を向けられるのが、いつもの事なのに。彼女だけは違った。キラキラとした瞳で見てくるのだ。
こんな瞳を7年生きてきたけれど、1度も向けられたことは無い。こんなに居心地のいい眼差しは始めてだ。居心地がいいと感じることにも驚いたけれど。と、そんな場合じゃなかった。
おれ達は、あの王宮から攫われたんだった。どうにかしなければ⋯と考えていたら、彼女が、おれの服の袖を引っ張った。
「ねぇ、ここから協力して脱出しましょう?」
ゆっくりと、おれに伝わるように話す彼女。それもそうだな。脱出する為には協力しなければ。彼女となら、協力しても良いと思えた。
「わかった」
「決まりね、私ソフィ・カンタレラ」
「おれは、スザク・リオニス」
「スザク!いい名前ね!私の事はソフィと呼んで。で、作戦をたてたのだけれど。貴方、魔法は使える??」
おれの髪色を見て分からないのか?黒に近い髪ほど、魔力が多いのだ。かと言って、魔力が多いのは『闇』の魔力。『光』は扱えない。だから、治癒魔法とかは使えない。
「使える」
「刃物は作れる?」
「作れないことも無い」
「やるじゃない!!じゃあ頼むわ」
手から闇の魔力を使って刃物らしきを物を作った。それで手首に巻かれたロープをお互いに切る。次は足首のロープを。
「よし、これで動けるわ」
「これから、どうするんだ──」
ガタン!
「「!?」」
「どうやら止まったようね⋯。さぁ、頑張るわよ!」
何を頑張るんだよ!?ソフィは、靴を脱ぎ出した。なんで脱ぐんだ??
「お前達、いい子にしてたか?」
と言いつつ、俺たちを覗き見てきた男1人に向けて、ソフィは自分が履いていたピンヒール両足の靴底を相手の両目に思いっきり当てた。
うわっ。痛てぇ。見てて痛てぇ⋯。
と思ってることも梅雨知らず、やってやったわ!!と。青白い肌にも関わらず、頬を上気させて喜んでいる。
コイツ、すげぇ女だ⋯。おれは、とんでもない女と出会ったんじゃないかと今更ながらに思った。
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