水の中で恋をした(前編)

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水の中で恋をした(前編)

「服装検査です、貴方は髪を染めてますね!! 減点します」 「お前、新しい風紀委員か? 俺の茶髪は生まれつきだ」 「違反する生徒は皆、そう言うんです!! とにかく減点です」 「それなら下の毛も見せてやるぜ、そうすりゃ地毛だって分かるだろ?」 「なっ、なんてことを言うのですか!? 貴方は二点減点です!!」 「女の子にはちょっと見せられねぇか、ちょっと別の男の風紀委員を呼んでくれ」  俺は早瀬雄輝(はやせゆうき)、十八歳になったばかりの高校三年生だ、俺は生まれつき茶髪でよくこういう服装検査に引っかかっていた、いつもならもう顔見知りの風紀委員がいるのだが、あいにくと多分新入生の女の子以外誰もいなかった。他の門で服装検査をやっているのだろう、俺はなるべくなら減点はされたくなかった、服装検査で三点以上減点されると学校の草むしりをやらされるのだ。それでちょっと困っていた俺に、きゃあきゃあという女の子の声が近づいてきた。俺は多分あいつが来たなと思って、ちょうどいいから助けて貰うことにした。 「あっ、あれは太刀川智之(たちかわともゆき)様!? ああん、どうしましょう!?」 「おーい、智之。ちょっとこの風紀委員の子を説得して」 「おはよう、雄輝。また服装検査で捕まってるの?」 「きゃあ!? 太刀川智之様!! おはようございます!!」 「そうだよ、この子。新入生じゃないか? 俺のこと何にも知らねぇの」 「しょうがないね、あのね。新入生さん、雄輝は生まれつき茶髪なんだよ」 「そうでしたか!? それで減点は無しということに致します!!」 「男の風紀委員だったら下の毛を見せれば、地毛だって分かったんだけどな。まぁ、いいや。ありがと、智之」 「……少しだけ待って雄輝、ちょっと人が来ない生徒指導室まで行くよ」  風紀委員の子はめろめろになって、智之が証言した途端に俺の減点を取り消した。智之の家は金持ちで智之本人も身長が高く顔がとても良かった、そこら辺のアイドルやモデルでは敵わないだろう、そんな智之は性格も良くて何度も俺を助けてくれている親友だ。俺は智之の言うことだから何の疑いもなく生徒指導室まで行った、智之の顔は笑っているのに目だけギラギラしているように俺には見えた。そうしたら智之はにっこり笑ったままでこう言った、俺は親友の言うことだったから首を傾げながら従った。 「雄輝の下の毛見せて?」 「え? お前何度も見たことあるだろ、風呂だって一緒に入ったことがある」 「今、見たいの。だから見せて」 「別にいいけどな、ほらっ下の毛も茶色だろ」 「雄輝!! 今後は風紀検査でもこんな絶景を見せないで、相手が男の風紀委員でも駄目だよ」 「おっ、おう。分かった、そろそろ教室に行こうぜ」  智之は真剣な表情で俺にそう言った、俺はよく分からなかったが確かに公衆の面前で、迂闊に下の毛を見せるのはよくないなと反省した。せっきの女生徒に至っては俺はセクハラで訴えられても仕方がない、智之はやっぱりよく考えているなと思って俺は智之と教室に向かった。教室でも俺たちは隣同士の席だった、今まで何度も席替えをしているのだが、何故かいつも俺の隣は智之だった。小学校の前に智之と知り合ってからずっとそうなのだ、俺は最初は何かの呪いかと思ったくらいだ。だって小学生になる前に初めて会った時、その智之の第一印象は『こいつ、うさんくさい』だった。 「こんにちは、太刀川智之です」 「こんにちは、早瀬雄輝だ」 「父が信用している部下の子と会えて僕は嬉しいよ」 「そういうものか、俺だったら面倒くさいと思うけどな」 「君もいつかは太刀川の会社で、働くことになるかもしれないね」 「あっ、いや。俺は東京に行きたい、もっと大きな都市で働きたい」  俺は以前から日本の首都に行きたいと思っていたからそう言った、そうすると智之の笑顔が少しくずれた。なんだかこいつ僕の前で何を言ってんのという雰囲気がしたから、俺は智之を放っておいて遊びにきた太刀川家の見学に一人で行った。プールや池や日本庭園などがあって、広くてあちこち探検して面白かった。智之はいろいろと見てまわる俺を追いかけてきた、そして足を滑らせて智之がプールに落ちた。智之はまだ泳げないようだった、俺は周囲に大人もいなかったので、服と靴を脱いでプールに飛び込み、溺れて暴れる智之を背中から掴んで浮かせて、そうしてプールの端まで連れていった。 「げほっ、げほっ、けほっ、けほっ」 「大丈夫か? 誰か大人の人を呼んでくる」 「駄目、待って!! けほっ、けほっ」 「一応肺に水が入ってないか、医者に見て貰った方がいいだろ」 「とにかく雄輝はまず服を着て!! 医者にはそれから行く!!」 「あっ、忘れてた。水に入るのに服を着てると危ないからな」  そうして俺は服を着て智之を大人の人のところに連れていった、そうしたら何故だか俺が凄く怒られたが、智之は僕が足を滑らせたんだと庇ってくれた。そうして智之はお抱えの医者から見て貰った後で風呂に入っていた、どうしてなのか俺も一緒に風呂に放り込まれた。この家は風呂まででかい家で、俺は深ければ泳ぐことができるのになと思った。智之はその間ずっと俺のことをじぃっと見ていた、俺はそれを少しだけ不思議に思ったが、サウナなどもある大きい風呂の探検を始めた。そんなことをしていたら、智之が俺に話しかけてきた。 「どうして僕を助けてくれたの?」 「周囲に誰も大人がいなかったし、救助に使えるような縄なんかも無かった」 「溺れた人を助けるのは危険だよ、下手をすれば一緒に溺れる」 「知ってる、前に小さい子を助けた時、しがみつかれて死にそうになったからな」 「知ってたのに助けてくれたの!? 一体どうして!?」 「目の前で死にかけてるのに、助けないわけにはいかないだろ」  俺がそう言って答えたら智之は驚いていた、そうして俺たちは体が温まったらお風呂から上がり、俺は濡れた服の代わりに新しい服を貰った。それから俺は泊まっていくように言われた、父親からもそうするように言われたので、俺は太刀川家に泊まることになった。何故かお風呂から上がって随分経っても智之の顔は赤いままだった、そうして俺は太刀川家の家族と夕飯を食べることになった、そこで智之を助けた礼を言われたが俺は当たり前のことをしただけだった。智之は夕食の後に俺を自分の部屋に連れていった、広くて面白い物が沢山置いてある部屋だった。 「ねぇ、僕はαなんだけど、雄輝はα? β? Ω?」 「俺はΩだぞ、この本面白いな」 「そっ、そうなんだ。Ωか、そっか。……良かった」 「智之、この飛び出す絵本面白いな」 「あっ、他にもあるよ。良かったら見てみる?」 「ありがとう、智之」  そうして智之はいろんな本を見せてくれた、そうして仲良く話し合ったら眠くなってきた、智之に誘われて俺は智之の部屋のベッドで眠った。朝も太刀川家の家族と朝食を食べた、何故か皆が俺に好意的だった。智之は最初の印象は消えて無くなって、心からの笑顔で俺の方を見ていた。そうして俺は自分の家まで車で送って貰った、智之もついてきて今度はいつ遊びにくると俺に聞いた。俺はそれは俺の父親次第だと答えた、智之はそうかと笑って頷いた。そうして、俺が家に帰りついて車を下りようとすると、智之に両手を握られてこう言われた。 「雄輝と僕はもう親友だからね、これからも一緒に遊ぶし、何でもお互いのことは話そうね」 「親友か、いいぞ。智之は俺の親友だ、また遊びに行く」 「絶対だよ、僕たちは親友だからね!!」 「うん、分かった。親友だな!!」 「またすぐ遊びに来てね、雄輝」 「おう、それじゃまたな」  こうして俺と智之は親友になった、それから俺はいつでも太刀川家に、好きな時に遊びに行っていいことになった。実際にそれで俺は智之のところに遊びにいった、遊ぶだけじゃなくて勉強したりもした。俺は智之の頭の良さに凄く驚いた、智之は小学校前なのにもう高校生くらいの勉強をしていた。そして俺も同じ教材を薦められて、智之と一緒に勉強するうちに成績がぐんぐん上がった。俺はすぐに智之に追いついて高校の勉強まで始めた、智之もそれに驚いて負けずに勉強していた。そうして俺たちは仲良く小学、中学、高校まで一緒に過ごした。 「ねぇ、雄輝。僕ね、精通がきたんだ。僕のを見せるから、雄輝のも見せて」 「それって見せ合うものか? ちょっと恥ずかしくないか?」 「他の人と違うのか見てみたいんだよ、だから雄輝お願い親友でしょ」 「まぁ、いいけど」 「やった!! 僕の部屋に行こう!!」 「他の人には言うなよ、智之」  そうして俺たちはオナニーを見せ合った仲でもあった、智之はその間ずっと顔が真っ赤になっていて、俺のオナニーを見た後には鼻血を出していた。そうして僕が雄輝のに触ってもいいと聞かれたが、なんだか嫌な予感がしてそれは遠慮してもらった。でも智之は嬉しそうに笑っていて、その後は遊んでいてもご機嫌だった。また見せて欲しいとも言われたが、何度も見ても仕方がないだろとそれはお断りした。智之は残念がっていたがオナニーなんて普通なら人に見せるものじゃない、恋人同士とかなら違うのかもしれないが俺は智之の恋人ではなかった。俺がそんな小学生の頃の微笑ましい思い出を辿っていると、今の智之が放課後の教室で俺にこう言ってきた。 「なぁ、雄輝。今度、うちの家でお見合い会があるんだ。雄輝にもぜひ来てほしい」 「お見合い会?」 「要はうちの親戚中の男のΩや女の子を集めて、僕とお見合いをさせる会なんだよ」 「そんなところに俺が行っていいのか?」 「むしろ絶対にいて欲しい、僕の貞操を狙う狼の集まりだよ!?」 「それは確かに怖そうだ、よし俺も一緒にいてやる!!」  雄輝ありがとうと言って智之は俺に抱き着いてきた、そのまま智之は俺に頬ずりしたり、抱き着いた手が尻の方まで伸びてきたから、俺はそれを振り払おうをしたがなかなかできなかった。そのまま智之は俺の頬にキスまでしたし、しっかりと尻を触ったりした。俺はセクハラするならお見合い会に行かねぇぞと言うと、智之はすぐに俺から手を放した。智之は基本的にいい奴なのだが、スキンシップが激しかった。智之の家に泊まりにいって一緒に寝ると、朝になったら俺も智之も全裸になって、智之が抱き着いていることもしばしばだった。 「それから雄輝、ヒートはまだ来ないの?」 「うん、来ない。定期的に抑制剤を飲んでるからかな」 「一度、抑制剤を止めてみたら?」 「それでもしとんでもないαに、引っかかったら嫌だ」 「ふふっ、そうなの。僕は早く雄輝のヒートがくるといいなって思うよ」 「恋人もいないのにヒートなんてきたら、苦しいだろうし面倒くさいだけだろう」  俺は智之を親友だと思っていた、多少言動が変でもそのくらい変わった人間はいるものだ。それに俺に面白がって告白してきたりすることもなかった、俺はΩだったから面白がって付き合う気のない告白をする男や女がいるのだ。でも智之に今日告られたという話をすると、そういう人間は嘘だったんです、ゲームだったんですと謝りにくるのが日常だった。俺はどうもモテないようだ、智之のように大勢にモテるのが、ほんの少しだけ羨ましかった。そんなことを考えていたらあっという間に、智之の言っていたお見合い会が始まった。 「うっわっ、男も女も凄い数だな」
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