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前回までのあらすじ
悪役令嬢クリティアに転生した干物、栗田玲奈(35歳)は、婚約破棄されたことで幸せになり、おひとりさま生活を満喫しはじめた。
「あー、焼き鳥食いてぇ……」
悪役令嬢クリティアに転したことに気づいて三日。
美人は三日で飽きる。
セレブ生活も三日で飽きる。
私が転生したのは、悪役令嬢のクリティア20歳。
一個下の弟がいるから家督の問題はナッシング。
普通に令嬢生活を楽しめれば良かったんだろうけどさ…………………。
侍女に退室してもらって、一人どでかいベッドに寝転がる。
「あーーー…………ビール飲みたい。塩焼き鳥でモツ煮を流し込みたい、たこわさびのせた白米食べたい…………」
完全なる日本食シックである。
ホームシックならぬ日本食シック。
毎日出てくる銀座のフレンチみたいな食事を、脳みそが拒絶している。
いや、美味しいのよ。すごく。この家のお抱え料理人は腕がいいね。
でも貧乏舌の私に合わない。
スーパーの半額シールが貼られた焼き鳥をレンチンして頬張るのがイイんだよ。
侍女にお世話されてコルセット締められてドレス着て生活するおセレブな日々が、合わない!
だるだるに伸びたスウェット上下着て、横になって焼き鳥頬張ってテレビ見たいわぁ。
あ、家を出ればいいんだ。
私はすぐさま今世の父上にかけあった。
「お父様。私、自立したいですわ。ひとり暮らしさせてください」
「そんなことできないよクリティア。お前は我が家の可愛い娘だ。放り出せるわけないだろう。ロブソンに振られて傷心なのはわかるが自暴自棄になっては駄目だよ」
ごめんよ父上。何を勘違いしているかわからないけれど、傷つきようがねぇんですわ。
初対面の人間にいきなりサヨナラ宣言されてポカーンよ。
「いいえお父様。傷心してはいません。私、自分のことを自分でしたいのです」
着替えのお手伝いをされたくないし、入浴手伝いされたくないし、なんなら自分で料理用意したいわ。
今朝、自分で作りたいって言ったら料理人が「ぼくはクビってことですか、そんなに不味かったんですかお嬢様!!!!」とボロ泣きしてしまった。
料理は使用人の仕事であり、調理場は令嬢が立ち入っていい場所じゃない。
いや、ごめんて。
あなたの料理が不味いのではなくて、私の貧乏舌がマズいんです。
自分で料理させてもらえないとか、めんどくさいな貴族の令嬢生活。
あー…………ワサビ茶漬け食べたい。
いや、まてよ。
料理研究とかなんとか、それっぽい理由をつけてみるか。
「私、今日から料理研究家になりますわ!」
貴族の令嬢でも働いている人はいる。
料理人いわくいつも出しているのはこの国の定番料理。
つまり我が国に和食はない。
海外では日本食ブームが起きるように、この世界で焼き鳥をはじめとする日本食を発表して広まれば、屋敷でも普通に食べられるようになるんじゃないか。
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