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ドアは一見何も変哲もないが、マゲイルのみは違った。全身を不快な、自分とは違う何かが這っているような感覚に襲われた。
これは呪いか?最初に過ぎった答えだった。呪いはマゲイルの体にとっては不快だが、分析は至極簡単だった。この不快と、過去に自分が発見した呪詛魔法陣の型に組み合わせればいいだけなのだ。
早速、教職部屋に戻り資料を漁った。膨大な資料はマゲイルが自分が果たすべき使命を自覚した時から、ずっと集めて使い続けたものばかりだ。殆どの内容は頭に入っている。そして自分の研究のことも。自分専用の型表を発掘し、自分が感じた感覚を探す。この型表はマゲイルにしか使えないが、最も信頼できる資料だった。型表によれば、体を何かが這う感覚の魔法陣は弱い呪いの類であり、その呪いを解くには自身の魔法陣を当てれば良いようだった。
ドアの前に戻り自身の魔法陣を当てる。逆五芒星をシンボルに置いたマゲイルの魔法陣は、マゲイルの本質を表し意思である。しかし、魔法陣はマゲイルの意思など無いかのように消えてしまった。この瞬間、マゲイルの仕事が増えることが確定した。
「面倒だ……」
昼下がり、いつも暗い空に一筋の光が廊下に入りマゲイルに注がれる。天界の光とドアの封印は、今ここでマゲイルにとって同じものになった。床に座り込み、考える。
このドアが呪いの類ではないのは、今の試行でわかった。ならば、通常の魔法陣なのだろうか?この反応をする単一の魔法陣は自分が知っている限り存在しない。単一の魔法陣で解くことは出来ないものでも、何かしらの感覚はあった。しかし先程の反応は、自身の体が物を通り過ぎるような、物体が存在しないような感覚と共に起きた。この反応をする魔法陣の見当がついた。
マゲイルは立ち上がり、教職部屋へ戻った。
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