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腕に違和感を覚え、瞼を開ける。右腕の方に誰かいる。正確には誰かが腕を強く掴んでいる。ロチは驚き身を起こそうとしたが、うつ伏せだったために起き上がることが出来なかった。
「東のデーモンの血って、こっちの悪魔と変わらないのね。」
意味の分らない言葉に、更に驚く。
「ちょっと……、離してよ!」
ロチは精一杯大声を上げると、その「人」は腕を放した。すぐに身体を起こし、その「人」に目をやる。そこには長い黒髪を携えた赤目の少女が立っていた。
「あぁ、ごめんなさい。私、初めて東のデーモンを見たから、つい血の味が気になっちゃって……。」
その言葉を聞いたロチは絶叫した。急いで右腕を見ると、ぽっかり二つ小さい穴と前歯らしき噛み跡が付いていた。穴からは血が流れシーツを汚していた。その血は止まることを知らず、どんどん流れていく。
「ごめんなさい!!すぐに手当するから!!!」
少女はすぐに包帯と謎の液体を取り出し、傷に液体をかける。その途端痛みが襲ったが包帯が巻かれるとすぐに収まった。少女は申し訳なさそうな表情を浮かべつつも、紙に何か書いていた。書いた言葉をブツブツと呟くその姿は山にいる妖怪よりも恐ろしく映った。か細く青白い手には似つかわしくない速さでペンを進める少女はロチの視線に気づき、すぐに手の中のものを仕舞った。
「初めまして。私はドラクレア・エリジェーベト。ドラクレアが名字でエリジェーベトが名前よ。」
初めて聞く自己紹介に意識ははっきりしない。えりじぇ……何だろうか、聴きなじみのない名前は余計にロチの意識を遠のかせる。
「あぁ ……血吸い過ぎちゃったみたい……。お茶をご馳走するわ。それで賄って。」
少女に抱えられ、ロチはあの共有スペースに連れて行かれた。
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