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――蘇る膝の痛み。水を吸った制服が重い。気付けばそこは朝の見知った通学路だった。雨の中遅刻ギリギリで学校に着くと、皐月に心配され、弥生には呆れられながら、保健室で手当てを受ける。皐月と弥生の仲睦まじい姿を見るのは勿論辛いが、気持ちを吐き出せた今はさっきまでより少しだけ楽だ。ジャージに着替えて席に着き、雨の降る外を眺める。何だか長く不思議な夢を見ていたみたいだ。
ガラガラと扉が開き、担任が入ってくる。誰かを引き連れて。
「ゴホン。えー突然ですが、転入生を紹介します」
「四月一日 真です! 好きなことは人間観察! よろしくお願いしまーす!」
思い切り私の方にウインクを飛ばす転入生、ワタヌキマコト。私は「うっそー!?」と立ち上がった。
「君が選んだ“本当”がどれ程のものか、僕に見せてよ」
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