#4 私の師

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 放課後の教職部屋のドアを境に、マゲイルにとって懐かしく逃避している男がいた。その男は伏しがちな瑠璃色の目をジッとマゲイルに向け、口角が上がる口はマゲイルに言葉を放つ。 「お久しぶり、マゲイル。久々に会ったんだ、茶を飲もう。」  マゲイルは開かずのドアの封印を解きに向かうつもりだったが、男はマゲイルが断れないことを知っている。 「わかりました、先生。テラスに行きましょう。」  マゲイルは道具を部屋に置き、レツとテラスに向かった。  いつも通りの放課後に、テラスのテーブル席に座る2人は、一見すると仲の良い同僚か先輩後輩のようにも見えた。同じ青色の東の装束を纏った2人は、片方は鉢巻のような物を着け、もう片方は魔術師の最高位の証を下げている。系統は異なるが根底が同じとも取れる2人は、特製の茶を啜っていた。 「私が教えた茶葉の調合は忘れていない、か。覚えているのは何より。」 「レツ先生の本はまだ見返していますので……。」  マゲイルは茶を啜るレツに対し答えた。目の前にいるのはマゲイルの薬の師であり、恩人でもある。マゲイルが今のように魔法陣の才能を発揮し魔術師の最高位を手に入れたのも、レツのお陰である。  マゲイルも茶を啜った。レツがこっちの魔術学校に来るのは知っていたが、一つ気がかりなことがあった。 「先生、ロチはどうしましたか?一緒に来たのでしょう?」 「ロチは寮の管理者と中等教育部の教員に任せた。私は高等教育部のⅠ期Ⅱ期だからね。管轄外だ。」  会ったことは無いもののレツの手紙に度々出てきた妹弟子・ロチは、レツに見放されたようだった。師は昔から変わらない。自分の管轄内のことはやるが、管轄外は、かつて繋がりがあったとしても絶対に手を出さない。それは直弟子でも同じだった。マゲイルが魔術学校に行った後、マゲイルから手紙をよこさない限りレツはマゲイルに手紙を書くことは無かった。今日、茶に誘ったのは高等教育部の教員になるから、また昔のように顔を合わせるからだろう。普通の悪魔や鬼はレツを薄情者とするだろう。しかし、マゲイルにとってはこれも師と感じている。悪くは言えない。
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