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伏しがちな目を細めたレツは、「それでは。」と言い立ち去った。マゲイルは師の背中を見つめる。最後に見てから何も変わっていない。装束も目の色も髪の色も何もかも。幾年経ち、マゲイルは大人になった。しかし、レツはマゲイルが物心ついた時の見目と一寸も変わらない。そのような種族といえばそれまでだが、マゲイルの知る限り見目の変わらない東の魔物はいない。
魔術学校に入ってしばらくして、その疑問がマゲイルに生まれた。幾度となく手紙に書いたが、その手紙だけは返事が来なかった。マゲイルの、最初のレツに対する悟りだった。干渉するのはやめよう。自分の師だ。師であり恩人だ。種族など気にすることでもない。そう思い続けるマゲイルの急須には、半分乾き始めた茶葉が残っていた。
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