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魔界のぼんやり明るい早朝に、大きい箱と小さい箱が届いた。大きい箱の送り主は強欲地域の仕立て屋、宛先はマゲイル直弟子のロチ、小さい箱の送り主はマゲイル、宛先はロチであった。また小さい箱はジェーンにとって少々時間のかかる指示が書かれていた。幽霊メイドのジェーンは決まりの通りに動いた。
今日はマゲイルとの特別授業のない、いわゆる休日だった。しかし、新学期までに「マゲイルの直弟子」にならなければならない。ロチは寮の自習室で共有スペースから持ってきた魔法陣の本で宿題をする。魔法陣の読み方はマゲイルの授業で大分理解できたが、魔法陣の理論的な作り方、そして魔法陣石を使った基礎的な魔法陣の形成をするのは未だにできていない。そのことをマゲイルに伝えると、理論的な作り方から理解するために魔法陣理論の復習と指南書の内容をまとめてくるよう言われた。指南書は共有スペースの本にあったため引っ張り出して来たものの、マゲイルが教えてくれた感覚と一般の魔法陣を作る感覚は違うようで、まとめて実際に試みても中々上手くいかなかった。
「ロチさん、お荷物が届いております。玄関まで来てください。」
いきなり声をかけられたため、ロチは必要以上に驚いてしまった。声の元に目を遣ると、首だけのジェーンがふわふわ浮かんでいた。青白く正気の無い顔が浮かんでいる光景は、ロチにちょっとばかりの恐怖を覚えさせた。
「わっわかりました。今行きます。」
ジェーンに言われた通り玄関に向かうと首のないジェーンの体と、大きさの異なる箱が置いてあった。大きい箱は以前手紙で知らされた制服だと分かったが、もう一つの箱は見当もつかなかった。
「ロチさん、小さいお荷物は私とロチさん以外の方の同席を持って開封しなければならないものです。今の時間帯なら共有スペースにトビアさんがいると思うので彼にお願いしましょう。小さい箱はロチさんが持ってください。」
ロチは何か決まりがあることを察し、小さい箱を手に取った。その箱は大きさに反して少しずっしりと重く中から微かに金属がぶつかるような音が聞こえた。大きい箱はジェーンが持ち、共有スペースへ向かった。
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