かみさまのおひっこし!

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「いってー、なんつー怪力だよ、あのヤローもじじいもバケモンかよ」 地下牢の石畳に放り込まれたアルドは麻袋から這い出した。罠にかかってひっくり返っていたところを巨漢が降ろしてくれたのはいいが、見事な手さばきで気絶させられて縛り上げられた挙げ句に麻袋行きである。ここまで運んできた老人は衰えなど感じさせない力で、暴れるアルドを抑え込んでいた。竜人族は人族よりも力が強いはずだが、どうやら今日出会った男たちは例外らしい。 さて、いつここから出るかな。 自分は竜人族とはいえ子どもだから油断しているに違いない。ようやくここまでたどりついたのだ。こっちはほしいものさえ手に入れば、それでいい。 足音が聞こえ、アルドはとがった耳を立てた。 「なんだよ、見世物じゃねーぞ」 先程大男たちと一緒にいた少女が格子の向こう側にぴょい、と現れた。 「ごめん、わたし竜人族初めて見るからさ…」 「結界は抜けれるのに動物の罠にかかるよーな間抜けがどんなんか知りたかったのか?」 「まあ…」 「おいこら、否定しろよそこは」 ぐうううぅ、と竜人族の少年の腹が鳴った。威厳のかけらもない姿をさらす恰好になったアルドは、ロゼから視線を逸らした。 「そうかなー、と思って持ってきた!」 明るい声を出した少女に再び目を向けると、額にぽん、と何か当たった。 「あ、そっか、きみ縛られてたんだっけ」 足元に転がったのは丸いパンだった。 「今忙しくてこれしか持ってこれなかったけど、よかったら食べて! 縛られてても竜だったらよゆーで引きちぎれるでしょ!」 「……俺はアルド…おまえは?」 こんなふうに話しかけられるのは初めてかもしれない。他族からの畏怖や同族からの嘲笑に囲まれてきたアルドは、新鮮な感情が自分の内から出てくることに驚いた。 「ロゼだよ、よろしくね!」 遠くから少女を呼ぶ声が聞こえた。 「やば、もう行かないとじいちゃんに殺される!」 じゃあね、と大きく手を振って少女は立ち去った。アルドはパンに目をやると、今から自分のしようとしていることにためらいを感じ、戸惑った。 「いや…俺はどうしても力を手に入れて、あいつらを…」
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